「あっちゃ~ん! 見て見て~」
「わあー! すっごく綺麗ですキサちゃん!」
「紀紗。取り敢えず置きに行くわよ」
花屋が到着し、店員とともにツリーの近くへ生花を運んでいく。
「手伝いましょうか!」
「大丈夫! こっちは任せといてー!」
「とか言いながらアンタ一番軽いの運んでるじゃない!」
「だってー、定員さんがいいですよーって言うんだもん」
「あれ? 珍しいですね。ツバサくんもキサちゃんみたいに言われなかったんですか?」
「だってあそこの花屋、アタシのこと知ってるもの……」
「そ、そうでしたか」
どうやらオカマだと知られているみたいで、ツバサはここぞとばかりにこき使われていた。
まあ彼はとっても力持ちだから。そこまで知っていて、任せておいて大丈夫だと店員も判断したのだろう。
すでに花の根元のギリギリまで茎を切り落としているので、濡らした脱脂綿のようなもの上に、花は並んでいた。色とりどりで、この季節にも関わらずたくさんの花があった。これで、ツリーの根元は寂しくないだろう。
その花の入った箱のそばには、看板が立てられていた。
┌ ┐
*。*。*。Merry Xmas *。*。*。
こちらからお好きな花をお取りください
そっと願い事をしながら
ツリーの根元を飾ってあげてください
今日があなたにとって
素敵な夜になりますように……
With best wishes forMerryXmas.
└ ┘
「ふう。こんなもんかしら」
「お疲れ様でしたツバサくん」
どうにか花を運び込めたみたいだが、枯れてしまわないようしょっちゅう水は足してあげないといけないようだ。
「にしても、なんで生花にしたのよ。造花とかあるじゃない。値段張ったのよ」
「す、すみませんツバサくん……」
『彼の方が会計向きなのでは?』と思ったが、きっと女性的な感覚の持ち主だから、家計簿的なのつけて頭抱えているのだろう、うん。
「まあ学校の金だし、理事長の財布から出したからいいけど」
「(あれ。結局予算超えちゃったの? 理事長からくすねちゃったの?)」
「だから、生花にこだわった理由が知りたいだけ」
きっと、わざわざ二人きりの時を選んでくれたのだろう。
「……枯れるからだよ」
「は?」
「生花は枯れるでしょう? だから、花が咲いてる時間は貴重なんだって。幸せなひとときを、大事にして欲しかったんだ」
彼が目を見張った理由がすぐにはわからなくて、慌てて仮面を着け直す。
「……葵」
「――! な、なんですか?」
やっぱり、どうしても男モードに慣れないでいた。モードというか、彼の場合こっちの方が通常なのだけど。
「……いや、なんでもない」
でも彼は、なんだか苦しそうに、何かを耐えているように見えた。
「……っ。今日は、楽しい一日になるといいな」
「……はいっ。そうですね」
彼が何も言わないなら聞かない。できる限り待つって、決めたから。
クリスマスパーティー開始まで、あと…………2時間半。



