すべてはあの花のために⑤


「アーオイちゃん! 順調?」

「順調ですよ。カナデくんはどうですか?」


 楽団の人が来たら大忙しになるだろう。カナデがその前にと、葵のところへやってくる。


「体育館の前側はもうほとんどできたかなーって感じ。後ろの左側が前から見て少し寂しかったから、飾り付けしちゃおー?」

「わかりました。それでは行きましょう」


 葵が持とうとしたけれど、カナデが飾りの入った箱を運んでくれた。


「アオイちゃん、昨日は本当に大丈夫だった?」

「ご心配ありがとうございます。少し腰が痛かっただけで、大丈夫ですよ」

「うーんと。それもなんだけど、落ちてから何があったのかなって思って」

「ああ。あれは、ツリーの飾り付けに余計なものがあったので、それを取っただけですよ」


 本当に余計なものだ。
 あんなの、ツリーに飾るものじゃないんだから。

 葵が飾りを付けようとすると、カナデがその手を包み込んでくる。


「余計な赤いもの、だったんでしょ」


 確かに、高いとは言ってもネットまで落ちたのだ。色ぐらいなら彼らの目にも見えたのかもしれない。


「なんだったのそれ」

「よくわからなかったので、ぐしゃぐしゃにして昨日のうちに捨ててしまいました」

「……アオイちゃん。ツリーに赤いものを飾るのはなんでか知ってる?」


 カナデは、葵が持っていたヒイラギをその手から取り去り、自分が壁に付ける。


「キリストが流した血を意味してるんだって。ついでに、このヒイラギのギザギザした葉っぱは、キリストが処刑される時に被った茨の冠を表してる」

「…………」

「そう考えたらちょっと、クリスマスって不気味だよね」


 カナデはそう言って、葵の方を振り向いて小さく笑う。


「昨日のことといいその余計なものといい、何か悪いことが起こりそうな予感がするんだ」

「かなでくん……」

「だから、十分気をつけてて。俺なんかよりもアオイちゃんの方が十分強いのはわかってるし。……ただ、そんな感じがするってだけだから」


 カナデは葵の頭にそっと手を置いて、さっと横を通り過ぎていった。

 クリスマスパーティー開始まで、あと…………3時間。