「アーオイちゃん! 順調?」
「順調ですよ。カナデくんはどうですか?」
楽団の人が来たら大忙しになるだろう。カナデがその前にと、葵のところへやってくる。
「体育館の前側はもうほとんどできたかなーって感じ。後ろの左側が前から見て少し寂しかったから、飾り付けしちゃおー?」
「わかりました。それでは行きましょう」
葵が持とうとしたけれど、カナデが飾りの入った箱を運んでくれた。
「アオイちゃん、昨日は本当に大丈夫だった?」
「ご心配ありがとうございます。少し腰が痛かっただけで、大丈夫ですよ」
「うーんと。それもなんだけど、落ちてから何があったのかなって思って」
「ああ。あれは、ツリーの飾り付けに余計なものがあったので、それを取っただけですよ」
本当に余計なものだ。
あんなの、ツリーに飾るものじゃないんだから。
葵が飾りを付けようとすると、カナデがその手を包み込んでくる。
「余計な赤いもの、だったんでしょ」
確かに、高いとは言ってもネットまで落ちたのだ。色ぐらいなら彼らの目にも見えたのかもしれない。
「なんだったのそれ」
「よくわからなかったので、ぐしゃぐしゃにして昨日のうちに捨ててしまいました」
「……アオイちゃん。ツリーに赤いものを飾るのはなんでか知ってる?」
カナデは、葵が持っていたヒイラギをその手から取り去り、自分が壁に付ける。
「キリストが流した血を意味してるんだって。ついでに、このヒイラギのギザギザした葉っぱは、キリストが処刑される時に被った茨の冠を表してる」
「…………」
「そう考えたらちょっと、クリスマスって不気味だよね」
カナデはそう言って、葵の方を振り向いて小さく笑う。
「昨日のことといいその余計なものといい、何か悪いことが起こりそうな予感がするんだ」
「かなでくん……」
「だから、十分気をつけてて。俺なんかよりもアオイちゃんの方が十分強いのはわかってるし。……ただ、そんな感じがするってだけだから」
カナデは葵の頭にそっと手を置いて、さっと横を通り過ぎていった。
クリスマスパーティー開始まで、あと…………3時間。



