「さっき何話してたの」
「? さっきとは何でしょうか?」
チカゼと少し交代したのか、今度はヒナタが葵のところへやってきて、ちょっとだけ飾り付けを手伝ってくれていた。
チカゼの方をちらっと見たら……あれ? お腹摩ってません? すごく痛そうな顔してますけど?
「だから、さっきあのサボりと何してたのかって聞いてるんだけど」
「サボってたんですね」
ちゃんと言ってから行こうね。
「……何かあったの」
「? いえ。特にはありませんでしたけど……」
「嘘。誤魔化したってオレには通用しないから」
「だ、誰になら通用するんでしょう」
実際のところ、生徒会のメンバーみんなにバレる勢いだ。
「あんた隠すの下手だよ? わかってないの?」
「そそ、そんなはずはないと。思ってるんですけど」
「え。マジで。それで今までよく隠し通せてきたね」
だったらもう、何も言わないに徹しよう。言ったら言ったでボロが出るし。
「………………」
顔に出したら出したで心配されるから、じっと見つめられても我慢我慢。
「………………」
つ、突かれて反応したらしたで、何か言ってこられそうだし。もっと我慢しないと。
「(というか、君にまさかこんなことされると思わないから、今ものすごく対処に困ってるんですけどお?!)」
ちなみにヒナタは、葵のほっぺたをつんつん突いてきていた。
「……嘘だよ」
「……えっ?」
「嘘。隠せてないっていうのも下手だっていうのも。あんた上手いから、鎌掛けるしかない」
「ひなたくん……」
「しかも話してくれないでしょ」
「す、すみません」
「いいよ。謝って欲しいわけじゃない」
「は、い」
少し俯くと、ヒナタが少し屈んで覗き込んで葵を見つめてくる。
「何かあったら言って。心配だから」
「……え?」
「何。その信じられないものを見たような目は」
「今まさにその状態なので」
思ったことをはっきり伝えると、ガシッと頭を鷲掴みされた。
「痛い痛いいたいー……くない?」
「痛くしてないからね」
ヒナタは頭に手を乗せて、少しだけ力を入れているだけ。
「……ひなた、くん……?」
「オレじゃなくていいから」
切ない表情に、胸が締め付けられる。
「アキくんでもチカでも、キサでもいい。困ったことがあるなら、誰かに言ったらいいと思う。みんなあんたのこと心配してるし、何かあったなら助けたいって思ってるんだから」
「……え。っと……」
「何かあったら言いなよ。オレじゃなくていいから」
「……ひなたくんでも。いいの……?」
ぽろっと、言葉が零れた。
ヒナタは目を見開いて固まっている。葵も、自分から零れた言葉に驚いて、思わず口を手で塞ぐ。
「ご、ごめん。なんでもない」
ヒナタは、何も言わなかった。
ただ去り際に、やさしく頭をふわりと撫でていっただけ。
「下僕が主人に助けを求めるなんてできると思ってるの?」
耳元でそう囁いただけ。
嬉しそうな。でも何か少し違うような微笑みを残して。
クリスマスパーティー開始まで、あと…………3時間半。



