チカゼは、ヒナタにもうすでに伝えてあったのか、さっさと出て行ってしまう。葵は一応オウリとアカネに声を掛けて、彼に付いていった。
「それで、何のご用でしょうか」
「おい、二人だけだぞ。ここでもなのかよ」
「はい。申し訳ありません」
「チッ。わあったよ」
チカゼは壁にもたれかかり、今はもう枯れて寂しそうな桜の木を見つめていた。
「このパーティー、なんかあるんだろ」
彼もキサと同様肯定で。
「昨日のあれは、絶対に誰かが故意にしたもんだと、オレは思ってる」
「……そう、ですか」
「それからお前、昨日落ちてから何してた。なんですぐにネットから下りてこなかったんだ」
「……ちょっと、腰を痛めまして」
嘘ではない。本気で痛かったんだから!
彼じゃなかったら血祭りの刑にするくらいには痛かったんだぞ!
「また隠すのかよ」
「嘘は言ってませんよ」
「文化祭の時もだっただろうがよ」
彼には鎌を掛けられて一回失敗してるので、話す時は最善の注意を払わなければならない。……だけど、動揺は到底隠せるようなものではなかった。
「オレは、文化祭でお前を動かした奴を知ってる」
「(……う、そ。どう、して……)」
表情には出さず必死で堪えるが、言葉が上手く出てこない。
「屋上で怪しい奴を見た。二人だ。両方とも仮面着けてたから顔は知らねえ。一人は無口で、一言もオレの前では話さなかった。もう一人は、よ~く喋るふざけた野郎だった。……会話からして、絶対にお前になんか言った奴だってわかった。だから、今回も文化祭みたくあいつらが絡んでんじゃないかって聞いてんだよ」
そうか。だからあの時彼は、鎌を掛けたんだ。
「おい聞いてんのか。このままだったら、お前だけじゃなくて会場にいるみんながやべえだろうが」
「…………ぃょ」
「は? なんだって?」
葵は、真っ直ぐにチカゼを見つめる。
「そんなこと、絶対させない」
「……やっぱり、そうなんじゃねえか」
「絶対にさせないよ。……させてたまるかッ」
仮面を外し、語気を強めた葵に、チカゼは満足気に口角を上げた。
「なんかあったら言え。オレがお前の武器にも盾にも、手足にでもなってやるから」
「それはいい」
「え。オレ、結構いいこと言ったくね?」
「君はみんなを見ていてくれ。みんなを見て、おかしなとこがあったらわたしに言ってくれ」
はあと一つ、チカゼはため息を落とす。
「わあったよ。んじゃ、無理はすんな。それだけは約束してくれ」
「善処する」
仕方ないなと言いたげに苦笑を浮かべたチカゼは、ぽんと葵の肩を叩いた後、持ち場へと戻っていった。
クリスマスパーティー開始まで、あと……4時間。



