昨日、パーティー会場はきちんと施錠して帰ったため、昨日のままで特に異常は無し。
業者も到着し、葵たちはそれぞれの配置について飾り付けをしながら、今度は料理が運ばれるテーブルも用意していかなければならない。
「(くす玉割った時に、プレゼントが落ちてきて料理が台無しになっちゃいけないからね。テーブルは壁際につけて……っと)」
中央にはツリーが、そのまわりにカラフルな、飾り玉のようなくす玉が九つ設置されていく。ケーキは、ステージ裏に用意した業務用冷蔵庫で管理。
葵が壁際で飾り付けをしていると、キサが嬉しそうな顔をしてやってきた。
「あっちゃん、秋蘭とはもう大丈夫?」
「ええ。大丈夫です。ありがとうキサちゃん」
「よかった~。……実はさ、あっちゃんが帰ってから秋蘭を宥める会を開いてたんだよねー」
「はい? どういうことですか?」
「あっちゃんお迎えが来ちゃうじゃない? だから知らなくて当たり前なんだけど、そのあと秋蘭がもう途轍もなくうっざいくらいなんか自分を責めたりあっちゃんを罵ったりしてたのよ」
「(え。わたし罵られてたの?)」
目が点になっていると、キサが「まあちょっと盛りすぎたかもしれないけど」とクスッと笑いながら。
「結局のところ、あっちゃんと話したくて、近づきたくて、放したくなくてしょうがなかったってところかな?」
「じゃ! そういうことで~」と、翼でも生えたかのようにサササ~ッとキサは飾り付けを始めていた。
「(まあ、完全に戻ったわけじゃないんだけどね)」
アキラもきっと、隙あらば食らいついてくるのだろう。
「(あれ? わたしこっちで無理しすぎてない? 大丈夫?)」
予想外の展開になってしまうかもと、若干焦る葵である。
「(アキラくんに、アカネくんか……)」
間違いなく、増えていくだろう。
「(ほんと。みんなやさしいんだもんなあ)」
「よ。順調かよ、そっちは」
「あ。……はい。こちらは特に変わったこともなく順調です」
この話し方をして、一番嫌そうな顔をするのはチカゼだった。
「……それいつまでやんだよ」
「……わたしにもわかりません」
自分だってやめたい。今すぐに。
でも、やめてしまったら。家にみんなとのことが知られてしまったら……。
「(――させない。そんなことは絶対に)」
葵の雰囲気が変わったことに気付いたのか、チカゼはすっと目を細めた。
「わけがあんだろ? それはオレらには言えねえんだっけ」
「はい。ごめんなさい」
「言いたくねえの間違いじゃなくて?」
「否定はしません。でも、前者も間違いではないので」
「そうかよ」と、素っ気なく返される。
「……その、お前が言いたくねえことを知るにはどうしたらいいんだよ……」
「え? 何か言いましたか?」
あまりにも小さく呟くので、よく聞き取れなかった。
「オレさ、お前に聞きてえことあんだよ」
「今ですか? パーティーが終わってからでは……」
「いや。今ハッキリさせておきてえ」
チカゼは、葵に顎で体育館の入り口を指す。
「すぐ終わる。ここじゃオレも聞きづらいし」
「(有無を言わせず、か)」
まるで獲物を狩る百獣の王のような、眼光鋭い瞳を見ても拒否できる人がいるなら、その対処法を是非とも教えて欲しいと思った。



