すべてはあの花のために⑤


「だから、今は手を放して?」

「葵……」

「はよ放さんかい」

「あ」


 限界が来たのか、それとも葵の凄みが怖かったのか、アキラはさっと手を放した。



「はっ、放すならせめて言ってからああぁぁー……」

「ご、ごめん葵」


 ちなみに落ちていった葵は無事、腰のロープで「おえっ!?」となりながらネットの上に立った(、、、)


「(腰痛ーいッ! どうせならネットにダイブする方がよかったんですけど……!)」


 どうやら下のみんなも、葵が危ない状態になっていたのは気がついたようで、今はもう屋根は閉まっていっていた。
 ただ、このロープの長さにだけはちょっと文句を言ってやろうと、思ったところでふと、嫌な予感がして辺りを見回した。


「……はは。またですか」


 ご丁寧にまた、赤い封筒がちょこんと異質にツリーに飾り付けしてあった。


「わたし、赤い封筒センサーなるものが付いてるのかもしれないわ、うん」


 下でギャーギャー言っているみんなへ、「あーはいはい。下りますよ。ちょっと待っててねー」と答えながら、ツリーへ手を伸ばす。そして、無事に取れたそれを手に、ネットへ座り込んだ。


「今度はなんだろう。この間〈クリスマス楽しもうぜ! お互いにな!〉って手紙くれたばっかりなのに」


 葵は封を開き、ガサガサと手紙を取り出す。
 それを読み終わったら後ろにそのまま倒れ、ネットの上へ仰向けになった。


「はは。はははは……」


 乾いた笑い声を出しながら、額に腕を当てた。


「……上等だ、このばかちんが」


 ぐしゃりと紙を握り潰し、ジャージのポケットへと押し込んだ。