「あっちゃんさ、秋蘭と何かあったんでしょ」
それはもう、疑問ではなく肯定だった。
「申し訳ありません。心配をお掛けしてしまって」
「ううん。大丈夫だって信じてるから。あたしには言えないことかな?」
「……ごめんなさい。言いたく、ないんです」
葵が手に力を入れるものだから、持っていたジンジャーブレッドマンが真っ二つに割れてしまわないように、キサが一生懸命宥めてくれる。
「うん大丈夫だよ。あっちゃんが言ってくれるのを待ってるから。ただこれはあたしの我が儘でしかないんだけど……」
「キサちゃんの我が儘?」
「やっぱり秋蘭、しんどそうだからさ? 何かできることがあれば言ってね?」
「……はい。ありがとうキサちゃん」
仮面を少しだけ浮かせると、キサは少し嬉しそうに笑ってくれた。
笑顔が見られてよかったと一安心しているのもつかの間、何故か室内にいるにもかかわらず風が頬を撫でた。
「……え。な、なんで……」
「あ、あっちゃん大変! 屋根が……!」
開閉式の屋根が、徐々に開いていっているのだ。下の人たちは、それに全く気がついていない。
「キサちゃん! 急いで下へ! 身を屈めて! 何かに捕まりながら下りるよ!」
「う、うん!」
一番高いところの飾り付けをしていた葵たちの体に、容赦なく外から吹いてくる風が当たってくる。二人が下りていっている間も、どんどん屋根が開いていった。次第に風の強さが増した。
「皆さん! 急いで何かに捕まりながら下へ下りてください!」
作業している人たちに呼びかけながら、葵はキサの体も支えつつ、ゆっくり確実に歩いて下りていく。
「(にしたって、なんでいきなり屋根が……)」
天気や風の具合を見て、よければ明日は開けようと、そういう提案も確かに出た。でも、飾り付け中は危険だから、絶対に開閉はしない約束だったはずだ。
「(……約束。だった、はず……)」
意識が逸れたその一瞬を衝いたのか。冷たい突風が、葵の体に直撃した。
「……!? っ、あっちゃんッ!!」
体が後方へ持って行かれた。掴まれそうなものもなく、そのまま足場から落ちていく――……と、思っていた。
「……ッ、葵! 大丈夫か!」
「あっ、あきらくん?!」
いつの間に上ってきていたのか、アキラが足場から落ちてしまった葵の手を、間一髪のところで掴んだのだ。
「あ、アキラくん……!」
「……っ」
悔しそうな悲しそうな、そんな顔をする。
「(……もしかしてわたしが、口聞かないって言ったから……?)」
そんなの……。……っ、そんなのもう! どうだっていいでしょう!



