「ありがとうございますアイくん。……本当に。心が軽くなりました」
「それはよかったです」
まるで自分のことのように喜んでくれる彼に、心が温かくなる。
「……あの。何かお礼をさせてください」
「ええ?! いりませんよ! そもそもお礼して欲しかったわけではないですし!」
「で、でも。わたしの気が済みませんっ」
「……俺は、あなたが笑えるなら、それでいいんです」
目の前には、心底嬉しそうに微笑む彼。
「やっと。笑えましたね」
そういえば、いつの間にか仮面まで外れかかってしまっていた。
「い、いえ。あの。これは……」
違うというのもおかしい話だ。
けれど、笑えたのは本当に彼のおかげだし……。
「その。あなたがどうしてもと言うのであれば、お礼は後日でも構いませんか?」
「え? ええ。予定が合えば、わたしは構いません」
すると彼は希望を耳元でそっと囁いた。
「ええっ!?」
「だ、ダメですよね。やっぱり……」
「えーっと」
「いえいえ! 大丈夫です! ダメ元だったので! となると、お礼お礼……。俺があおいさんにしてもらうことで嬉しいことって言ったら、他に何があるかな……」
「あ、あの。アイくん」
「ん? なんです?」
葵は、少し目線を斜め下にずらした。
「えっと。……アイくんが、それでいいなら」
「ええ!? い、いいんですかっ?!」
「あ。アイくんが、それがいいということでしたら……」
「お。俺が言うのも変な話ですが、嫌じゃないんですか」
要望に対して、彼は酷く自信がなさそうだった。
「嫌とは違いますが。しょうがないとも思ってはいませんよ?」
「え? それってどういう……」
「ちょっと楽しみかもと。そう思うわたしがいるってことです」
「ほんのちょっとですけどね?」と、親指と人差し指で小さな隙間を作ってみせる。でも、その葵の最後の言葉は、彼には届いてなかったようで。
「どうしよう。すごく嬉しいっ!」
その喜びをアピールするかのように、両手で思い切り抱きついてきた。
「あっ! す、すみませんっ」
「いっ、いえ。……よ、喜んでもらえるなら」



