すべてはあの花のために⑤


「……やっと笑った。すごくきれいでかわいかったから、笑った顔が早く見たかったの」

「わ、わたしなんかきれいじゃないし。かわいくなんか……あ。あなたの方が、とってもかわいいよ?」

「……かわいくないよ。だってあたしは汚いもん。真っ黒だもん」


 確かに女の子は真っ黒の髪で、それがとても綺麗でした。


「そんなことないよ? 黒くてとってもきれい。……わたしの方が、もう真っ黒だよ。汚れちゃってる」

「あなたはきれいだよ!」

「ううん! あなたの方が!」


 そんな言い合いをしているのも、なんだかバカらしくなりました。

 それからは、ここで泣いていると、女の子がひょっこり現れるようになりました。


「あなた、お名前はなんていうの?」

「……えっと……」

「それも言えないんだね」

「ご。ごめんね」

「だったらハナちゃんって呼ぶ」

「え?」

「いつもお花に囲まれてるから。だから、ハナちゃん?」

「はな、ちゃん……」

「……いや、だった?」

「ううんっ。うれしい! あなたは? なんて呼んだらいい?」


 こどもが聞くと、女の子は黙り込んでしまいました。


「……あなたも、言えないの?」

「うん。ごめんね」

「だったら、なんて呼んだらいいかな?」

「何でもいいよ。ハナちゃんが好きなように呼んで?」


 そんなことを初めて言われたこどもは、うーんと悩みました。