すべてはあの花のために⑤


 どこか切羽詰まった様子に、葵は嫌な予感がした。


「……あきら、くん。あなたは……『知っている』のですか」


 すると、今にも泣き出しそうな顔で彼は葵に覆い被さり、耳元で小さく呟いた。

 ――……消えるな。消えないでくれと。



「(アカネくんといい、アキラくんといい。どうしてこうもまあ、わたしの言ってないところで広がってるかね)」


 泣きそうなのか、泣いているのか。震える肩に眉尻を下げながら、片手を外して彼の背中を摩ってあげる。


「(でもアカネくんは、わたしが『消える』ことまでは知らなかったはず。それなのに、アキラくんはどうして知ってるんだろう。キク先生もトーマさんも、恐らく理事長からわたしが『枯れる』とまでしか聞いていない。トーマさんは推測しただけ……)」


 ――なのに、どうして彼は知っている?



「……アキラくんは、理事長からそれを聞いたのですか」


 何も言わなかったが、小さく首を横に振った気がした。


「(理事長じゃない? じゃあ……シント?)」


 でも、シントがそんなことを言うわけがない。


「(理事長から、言ってしまったと聞いたのはキク先生とトーマさんだけ。直接ではないけど、あれは言ったようなものだろう。でも、シントからの報告は受けていない)」


 ――じゃあ、彼は『誰』から聞いたの。



「……あきら、くん。もしかして、ですが……」


 ふと、また葵の中で嫌な予感がよぎる。まさか。そうであって、欲しくないけれど。


「……『わたし』から、聞きましたか……?」


 声が震えるのを必死で抑えた。絶対に頷かないでと、必死に願った。