どこか切羽詰まった様子に、葵は嫌な予感がした。
「……あきら、くん。あなたは……『知っている』のですか」
すると、今にも泣き出しそうな顔で彼は葵に覆い被さり、耳元で小さく呟いた。
――……消えるな。消えないでくれと。
「(アカネくんといい、アキラくんといい。どうしてこうもまあ、わたしの言ってないところで広がってるかね)」
泣きそうなのか、泣いているのか。震える肩に眉尻を下げながら、片手を外して彼の背中を摩ってあげる。
「(でもアカネくんは、わたしが『消える』ことまでは知らなかったはず。それなのに、アキラくんはどうして知ってるんだろう。キク先生もトーマさんも、恐らく理事長からわたしが『枯れる』とまでしか聞いていない。トーマさんは推測しただけ……)」
――なのに、どうして彼は知っている?
「……アキラくんは、理事長からそれを聞いたのですか」
何も言わなかったが、小さく首を横に振った気がした。
「(理事長じゃない? じゃあ……シント?)」
でも、シントがそんなことを言うわけがない。
「(理事長から、言ってしまったと聞いたのはキク先生とトーマさんだけ。直接ではないけど、あれは言ったようなものだろう。でも、シントからの報告は受けていない)」
――じゃあ、彼は『誰』から聞いたの。
「……あきら、くん。もしかして、ですが……」
ふと、また葵の中で嫌な予感がよぎる。まさか。そうであって、欲しくないけれど。
「……『わたし』から、聞きましたか……?」
声が震えるのを必死で抑えた。絶対に頷かないでと、必死に願った。



