飼育員に、水温体験できるところがあると教えてくれたので、葵たちはそこへと足を向ける。
「曇ってる」
「きっと、ここと水の中の温度に差があるんだね」
そっと葵は水槽に触れてみた。
「ははっ。冷たい」
「なんでちょっと嬉しそうなの?」
先程までは、どこかボーッとしてたり、ちょっと怯えてるような印象だったが。今は「冷たい」と言いながらも楽しそうな、嬉しそうな葵にカナデが尋ねる。
「お姉さんのお話を聞いて、深海も素敵なところだなって思ったの」
「……俺は最初、アオイちゃんは深海に行きたいのかと思ってた」
「え?」
「たくさん飼育員さんに聞いてたから。だから興味があるのかなって。けど見てたらなんだかつらそうな感じだったから、どっちなのかよくわからなかった」
みんなも同じようなことを思ったのか、カナデの話に相槌を打っている。
「ちょっと偏見を持ってたの。深海って、真っ暗で冷たくて寂しいところだと思ってて。でもね? 話聞いて、そんなところでも頑張ってるお魚さんたちがいるのを知って、なんか元気出た!」
「アオイちゃんは深海に。暗くて冷たいところに行くの」
「え?」
葵の手を放すまいと、カナデがぎゅっと握ってくる。どこかつらそうに、悲しそうに。
「……ううん行かない。わたしは行かないよ? 行きたくなんて、ないもの」
「でも、行っちゃいそうな気がするんだ」
「カナデくん大丈夫だよ。どこにも行ったりするもんか。だって……ほら」
葵は、カナデと繋いでいる手を掲げる。
「カナデくんがちゃんと、手繋いでいてくれるから」
「アオイちゃん……」
――心配なら、ちゃんと手繋いでおいて?
そう意味を込めて、葵はにっこりと笑った。
そのあとはショップでお土産を買った。
「あっちゃんあっちゃん! これ! お揃いで買わない?」
「ん? どれどれ?」
それは、珊瑚の恋愛運UPのキーホルダー。
「キサちゃん、あなた十分でしょ」
「いやいや! キクちゃんの気持ちがいつ離れて行っちゃうかわからないからね! 念には念を入れておかないとっ!」
そう言ってキサは二つ手にとって、「はい! 一個はあっちゃんの!」と渡してくる。
「(あれだけなっがい両片想いしておいて、気持ちが離れることなんてないと思うんだけども)」
そんなことを思いつつ葵も、なんだか楽しくなってキサに乗っかって買ってみることにした。
出口でスタンプが押せたり、オリジナルのシールももらえるらしかったので、葵たちは最後にそれをして、係の人に「楽しかったです! ありがとうございましたー!」と、水族館を後にした。



