すべてはあの花のために⑤


 それから、その人はしょっちゅうわたしに会いに来てくれました。わたしと会って話をして、そのあとは旦那さんと奥さんと、深刻そうな話をしていました。
 会話の内容は想像つきました。彼がわたしを引き取りたいと言っていたのでしょう。でも二人はわたしのことを自分たちの娘だと思ってくれていて、すごく嬉しかった。

 だから、そんなわたしの大好きな二人を、わたしのせいで不幸にしてしまうのが嫌だったので、わたしはこう言いました。

『この人のところへ行けば、もっといろんなことが知られると思う』
『それに、この人のところならわたしは役に立てるんだって』
『わたしは彼のところへ行きたい。花を咲かせてみたい』

 必死に伝えようとするわたしに、二人はすごく寂しそうな顔を、苦しそうな顔をしていました。


 それから、わたしがその人にもらわれるまで、二人は一生懸命わたしにできる限りのことを教えてくれました。

 そして最後に奥さんが、わたしをモデルにした絵本を完結させたいんだと、言ってくれました。どうしたらいいのか、わたしにはわかりませんでした。

 でも絵本ならと思い、わたしは最後の最後、奥さんにずっと言えなかったことを伝えました。それを聞いた奥さんは、涙を流しながら、よく言ってくれたねと。喜んでくれました。



 そしてとうとう、わたしは二人の知り合いに引き取られました。


「お前は最初で最後の弟子だから!」


 最後に旦那さんは、そんな嬉しい言葉を伝えてくれました。そして奥さんは、絵本を渡しながら耳元でそっと囁きます。


「これを、あなたが信用できる、大切で大好きな人に渡しなさい」


 そして二人で最後にわたしを抱き締めてくれました。


「「いつでもここがお前(あなた)の家だから」」


 二人に、わたしは涙を流しました。嬉しくて、寂しくて、感情がごちゃごちゃでした。
 それでも、わたしといてはダメなんだと。そう思っていたわたしは、わたしの横に笑顔で立っていた彼の手を取りました。





「……わたしが今のお父様、アザミ様に引き取られたのは、小学校に上がる年の春のことでした」