それからしばらく経った頃。二人の知り合いが、家に訪ねてきました。
どうやらわたしのことの知っていたようで、その知り合いの人はわたしにあることを尋ねます。
わたしはその質問に素直に、自分が思ったことを伝えました。その人は嬉しそうに頷いてくれて、なんだかわたしも嬉しかったのを覚えています。
その人は、よく会いに来てくれました。
蕾が大きく膨らんでもうすぐお花が咲くんですと言うと、きっと綺麗な花なんだろうと微笑んでくれました。
その人はわたしのところへ来る度に、わたしに質問をしていきました。そういう話をしたことがなかったけど、わたしなんかで役に立てるならと素直にわたしは思ったことを伝えました。
その人と話すようになってから、旦那さんには、今までより一層武術を磨くよう言われ、自分を守れと言われてどんどん強くなりました。
奥さんの方には、ある教育をされました。それから、わたしをモデルに絵本を描きたいと言われたので、嬉しくなってわたしは大きく頷きました。
けれど、いきなりなんでそんなことを言い出したのだろうと、わたしは不思議に思いました。
でも、理由は簡単でした。すっかりなくなっていたと思っていた『黒いわたし』が、実は真夜中の数時間だけ、出てきていたのです。
二人はわたしの『心』を強く、そしてやさしいものにしようとしてくれたのだと思いました。だって『黒いわたし』は、『弱いわたし』が生んでしまったものだから。
そしていよいよ、花が開きそうになりました。わたしは嬉しくなって、二人を呼びに行こうと思いました。
まずは旦那さん。いつもいるお部屋をそうっと覗いたら、奥さんではない人と体を一つにしていました。
わたしは怖くなって、急いで奥さんのところへと走りました。二人がお母さんとお父さんみたいに、仲が悪くなってしまうのがいやだったんです。
けれど、もう手遅れでした。奥さんの方も、違う部屋で旦那さんではない人と体を重ねていました。
どうすればいいかわからず、とぼとぼと今まで一生懸命育てた花のところへ向かいます。
そして、わたしと『黒いわたし』は、その花の開花を待たずに、引っこ抜いてしまいました。結局、何の花だったのか。ハッキリとはわかりませんでした。
それでもやさしく接してくれる二人に、どう返したらいいかわかりませんでした。同じことを繰り返しては、二人もわたしのせいで仲が悪くなってしまうと思ったからです。
わたしはまた仮面を着けて、何も知らない振りを通しました。
でももしかしたら、二人がこうなってしまったのも全部、わたしのせいなのかもしれないと。そう思うようになりました。
きっとわたしには何か悪いものが憑いているのだと思い込み、木の棒で十字架を作ったり、自分に塩を掛けたりと、いろんなことをしました。
そんなことをしていると、また、二人の知り合いがやって来ました。
わたしは、その人に相談しました。わたしのせいで、二人の仲が悪くなってしまうんですと。きっと、わたしは誰のことも幸せにはできないんですと。
その人はわたしに視線を合わせ、にっこり笑いかけてくれました。だったら僕のところへおいでと。その人は言ってくれました。
でもわたしは首を振ります。わたしのせいで、今度はあなたが不幸になってしまいますと。けれどその人は小さく笑って、君がいてくれたら僕は幸せになれるんだと。そう言ってくれました。
『もしその気があるなら、僕のところへ来て開かなかったお花を咲かせてみないかい?』
その頃のわたしは、彼の言っていることがよくわかりませんでした。
でもわたしは、こんなわたしでも誰かの役に立てることが嬉しくて、彼のその言葉に大きく頷きました。



