すべてはあの花のために⑤


 ある若すぎる夫婦の間に、わたしは産まれました。

 母親の歳も若く、予定日よりも早くに生まれたことで体が小さかったわたしは、しばらくは保育器の中で育ちました。でもすぐに状態も安定し、元気だったわたしはすぐにその両親の元へと戻り、育てられました。

 何故赤ん坊のわたしが産まれてすぐのことを知っているのか。決して、両親から話を聞いたわけではありません。わたしが、『異常な赤ん坊』だったからです。

 それには、両親もすぐに気がつきました。


 わたしは、父の仕事で使う資料を見ていました。父は、わかるわけないのになと。母と一緒に微笑みながらわたしの様子を見ていました。
 けれど、誤字脱字はもちろん、計算間違いなどがあった箇所があったので、それを父にわたしは教えてあげました。一生懸命指を差して伝えてくるわたしに、父も母もまぐれだろうと、そう思っていたそうです。


 それから母に抱かれ、父の仕事の見送りをしていた時、わたしは父に傘を持っていくように促します。
 でも、天気予報は晴れ。決して雨が降るような天気でなかったので、父は何も持たずに仕事へと赴きましたが、その日はびしょ濡れで帰ってきました。ちょうど、通り雨にあったようです。


 ある日、母がお昼ご飯を作っていた時です。わたしは母を呼びました。早くこちらに来てくれと、泣き叫びました。
 いきなりどうしたのかと母は不思議に思いながらわたしのところへ来ましたが、その時ちょうど、さっきまで母が立っていた台所のつり下げ型の電気がいきなり落ちたのです。
 小さい子どもには、そういう何かを察知する力があるのかもしれないと、母はわたしに感謝してくれました。


 それはまだ、わたしが言葉を話せなかった時です。



 それからわたしが話せるようになった時、母の友人が遊びに来ました。わたしもお話に、加わりました。

『母と、仲が良いんですね』

 その友人はにっこり笑って頷きます。その後わたしはこう言いました。

『でも、父との方が仲が良いですよね』

 その友人はもちろん、母も目を見開きます。

 その時は笑って誤魔化していましたが、その友人が遊びに来ることは、もうありませんでした。その代わり少しずつ、父の帰りが遅くなりました。