「……っ、は、いっ。わかり。まし……っ」
「え。葵ちゃん、そんなにいやなの……?」
「それはそうだろう。俺とデートしよう葵」
「いや、それもなしだから。ていうかアオイちゃん何やって……」
葵は椅子から降りて、床に正座していた。
「不束者ではございますがああ……。よろじぐおねがいじまずううぅ……」
そして、額を地面に擦りつけた。
「ええ! いきなりどうしたの! 頭! 頭上げて!」
「あ、葵。仮面はどうなったんだ……」
「よ、よくわからんが、辛うじてセーフってことなんじゃないか……?」
今度はみんなして地べたに座り込んで大慌て。
「葵ちゃん、それお嫁に行く時に言うやつだからね」
「そうか。葵は俺のところへ……」
「今のは誰がどう見たってシランだったろうが」
顔を上げた葵は、さっきのが嘘みたいな顔をしていた。
「すみません。ギリギリの範囲で暴走したつもりです」
「いや、つもりとは何ぞや」
「流石は俺の葵。許容範囲をしっかりわかってる」
「何だよその誰も得しねえ許容範囲」
気を取り直し、全員が椅子に座り直したところで。
「ではシラン様。わたしはどちらへデートをしに行けばよろしいんでしょうか」
「……きっと、君が今、一番行きたいところだと思うよ」
勝手に話を進められて、アキラとカエデは首を傾げている。
「ちなみに秋蘭? 俺が葵ちゃんとデートするんだから、付いてきちゃダメだよー」
「なんでだ」
「なんでもー」
「嫌だ。俺は葵のそばから離れないと決めたんだ」
「……お前それ、世間一般ではストーカーって言うんだけど、大丈夫?」
「え。……どうしよ。俺、ストーカーになりたかったんだ」
「アキ! 頼むからそれだけはやめろ!」
まさかの自分のなりたいものに気づいてしまったアキラは、カエデに肩を掴まれ頭をぐらぐらと揺らされていた。
「……じゃあ、デートが終わったらアキラくんのところへ行きます。それでも、ダメですか?」
「嫌だ。俺も行きたい」
「どんだけアオイちゃん好きなんだお前は」
「それはもう、今すぐ葵を食べたいぐら――」
「それでしたらもう、わたしはアキラくんとは口をききませんし、半径10メートル以内にも入らせませんが、それでもいいんですね」
「わかった。気をつけて行ってこいよ」
三人は同時に思いました。
彼の意見を変えることができたのはさて、口をきかない方か、それとも半径10メートルの方かと。
「流石に10メートルだといろいろ難しいからな。……何か、変なことされたら言うんだぞ。俺がすぐ父さんを抹殺しに行くからな」
「その前にわたしがアキラくんを抹殺させていただきますわ?」
「き、きを、つけて……」
後者の方だったかと、納得していたカエデは、震え上がるアキラを見て思いました。『アオイちゃん、普段よりも攻撃力上がってね?』と。



