すべてはあの花のために⑤


「それにしても久し振りだね。何年振りかな」

「恐らく、十年程前になるかと」

「もうそんなに経っちゃうのか。薊様……お父様は息災かな」

「はい。特に変わったことはありません」


 葵の父が話に出てきて、アキラはすっと目を細めていた。


「あ。そうそう楓、今は執事の喋り方禁止ね。気持ち悪いから」

「ほーい了解だーバカ主」

「だ、大丈夫なんですか。仮にも主人に……」

「大丈夫だよ葵ちゃん。俺ら旧知の間柄だから」

「そういうことだ。アオイちゃん」

「(……そういうことなら、ヒイラギグループが倒産して、ここにすんなり入れたのも納得がいく)」

「なんだ『葵ちゃん』って」


 どうでもいいところでアキラが突っ込んでくる。てっきりみんな、スルーを決め込むと思っていた。というか葵はそうしようとした。


「にしても葵ちゃん、雰囲気変わった? 俺の記憶がまだおかしいのかな?」

「し、シラン様?」

「俺が知ってるアオイちゃんでもないけどなー」

「え? カエデさん?」

「だから、なんで『ちゃん付け』なんだ。いつの間に呼んでるんだ楓」


 けれど、皆さんいじって楽しんでいらした。
 シランは嬉しそうにわざと強調したり連呼するし、カエデはカエデで文句を言われながら、しれっとアキラの皿に野菜を増やしていっているし。


「むう。もういい。……葵、なんで父さんのこと知ってたんだ」

「え? それは……」

「お前は覚えてないみたいだけど、誕生日パーティーに葵ちゃんを連れて道明寺さんがいらしたからだよ。ぷぷっ」

「え」

「え? 覚えてねえの」

「え。……楓は覚えてたくせになんで言ってくれないんだ」

「いや、別に言っても言わなくても変わんねえと思ったからだよ。あーさてはお前、覚えてなくて悔しいんだろ~」

「笑うな。俺は結構ショックなんだ」

「そうかそうか。それは残念だったなー」


 そう考えたら、ちょうど彼がアキラの執事になった頃か。
 十年前。アキラが小学校に上がり、7歳の誕生日を迎えたパーティーに、父に連れられて参加したのは。