「それにしても久し振りだね。何年振りかな」
「恐らく、十年程前になるかと」
「もうそんなに経っちゃうのか。薊様……お父様は息災かな」
「はい。特に変わったことはありません」
葵の父が話に出てきて、アキラはすっと目を細めていた。
「あ。そうそう楓、今は執事の喋り方禁止ね。気持ち悪いから」
「ほーい了解だーバカ主」
「だ、大丈夫なんですか。仮にも主人に……」
「大丈夫だよ葵ちゃん。俺ら旧知の間柄だから」
「そういうことだ。アオイちゃん」
「(……そういうことなら、ヒイラギグループが倒産して、ここにすんなり入れたのも納得がいく)」
「なんだ『葵ちゃん』って」
どうでもいいところでアキラが突っ込んでくる。てっきりみんな、スルーを決め込むと思っていた。というか葵はそうしようとした。
「にしても葵ちゃん、雰囲気変わった? 俺の記憶がまだおかしいのかな?」
「し、シラン様?」
「俺が知ってるアオイちゃんでもないけどなー」
「え? カエデさん?」
「だから、なんで『ちゃん付け』なんだ。いつの間に呼んでるんだ楓」
けれど、皆さんいじって楽しんでいらした。
シランは嬉しそうにわざと強調したり連呼するし、カエデはカエデで文句を言われながら、しれっとアキラの皿に野菜を増やしていっているし。
「むう。もういい。……葵、なんで父さんのこと知ってたんだ」
「え? それは……」
「お前は覚えてないみたいだけど、誕生日パーティーに葵ちゃんを連れて道明寺さんがいらしたからだよ。ぷぷっ」
「え」
「え? 覚えてねえの」
「え。……楓は覚えてたくせになんで言ってくれないんだ」
「いや、別に言っても言わなくても変わんねえと思ったからだよ。あーさてはお前、覚えてなくて悔しいんだろ~」
「笑うな。俺は結構ショックなんだ」
「そうかそうか。それは残念だったなー」
そう考えたら、ちょうど彼がアキラの執事になった頃か。
十年前。アキラが小学校に上がり、7歳の誕生日を迎えたパーティーに、父に連れられて参加したのは。



