「あなたの言う信じたくないこととは、どこか裏切られてしまったような気持ちになることなのですね」
「……えっと」
「ちょっとでも気が紛れたらと思いまして」
何も言わなくても察してくれた彼は、そっと葵の手に自分の手を重ねるように触れ、そのままやさしく包み込んでくれる。その手が、とても温かくて心地よかった。
「……あったかい、です」
「それはよかった」
今度は頭を、ぎこちなく撫でてくれる。
「ふふ。なんか、小さな子どもになった気分です」
「でも、落ち着きません?」
「はい。……すっごく、うれしい」
葵の笑顔に驚いたのか、一瞬手を止めるが、またすぐに撫でてくれる。
「レンくんの手は、とっても綺麗ですね」
「え?」
葵は、繋がれていたままの手に力を込めた。
「綺麗で、とってもあったかい。……こうしてもらえるだけで、随分と落ち着きました」
「私の手は、綺麗なんかじゃありませんよ」
彼の顔に影が差すのを、初めて見た気がする。
「……もしあなたがそう思っていても、わたしはそう思っているからいいんです」
「私は、あなたの方が綺麗で温かいと、そう思いますよ」
今度は彼が、ぎゅうと繋いでいる手に力を込めた。
「……わたしなんか、綺麗でもないし、温かくもありませんよ」
「それでは、さっきのあなたの言葉を、そっくりそのまま返すことにしましょう」
「え?」
「もしあなたがそう思っていても、私がそう思っているのでいいんです」
彼の顔にはもう、差し込んだ影はなかった。



