すべてはあの花のために⑤


 でも彼はどちらかというと、突っ掛かってくる三人の反応を見て楽しんでるみたいだ。


「(なんだ。この四人が仲良いんだね)」


 問い質そうとしてくる三人を、上手くひらりと躱して、逆に痛いところを突いている。


「(彼が目で『今のうちに』と言ってくれてるので、さっさと退散しますか)」


 目線で会話をした後、互いに小さく礼をして、葵は1-Sを後にした。


「(ただ放課後尋問されそうだけど……)」


 そんなことを思いながら、全クラスを回れた葵は教室へと戻ってくる。


「あっちゃんおはよ~」

「あ、おはようございますキサちゃん」

「おはよーアオイちゃん」

「おっはよお~!」

「おはよ」

「おはよう葵」

「カナデくんもアカネくんもツバサくんもアキラくんも。おはようございます」


 以前も軽い挨拶程度だった。みんなの前以外では、いつでも仮面は着けてたから。


「(確かにこれは、剥がれすぎだったかもしれない)」


 ムカつくけれど、あいつに言われた通りだ。
 ふとした瞬間。みんなの前だったら、他の生徒がいても仮面を外していたのだろう。

 今までは何の苦労もなく着けられていたのに、葵にとってそれだけみんなの存在が大きくて温かいものなのだと、改めて実感させられる。


「(だって、これを着けたら一気に冷たくなるんだ)」


 それでも、葵は『着ける』ことを選んだ。
 でもそれは、『諦めた』わけではない。



 午前の授業を受け終えた葵は、みんなに断りを入れて生徒会室へと足を進める。そこでなら鍵を閉められるからだ。


「さて、と」


 赤い封筒は全部で五つ。ご丁寧にも、引き裂かれたポスターを初めに発見した掲示板以外の全てに、押しピンで貼られてた。しかも一つの手紙をわざわざ五つに分けたようで、文章を並び替える手間が増えて面倒くさいことこの上なかった。