すべてはあの花のために⑤


「……じ、じゃあ金曜日の放課後また結果を伺いに来るので。それまでに集計をお願いします月雪くん」

「蓮で結構ですよ。道明寺先輩」

「え……?」

「というか『つきゆき』って、言いにくくないですか? 私も時々、自分の自己紹介の時噛むんですよ」

「え? そんなことは……」

「でも、『れん』と言う方が簡単でしょう?」


 どうやらもう、名字では呼ばせてくれないみたいだ。


「……じ、じゃあ。レンくんで。いいですか?」

「はい。……ありがとうございます道明寺先輩」


 名前を呼ぶと、彼は嬉しそうに笑ってくれた。


「……あの、『道明寺』も長くて言いにくくないですか? 『先輩』まで付けたら余計に……」

「え?」

「あっ。すみません。何言ってるんだろわたし……」


 そんなの、遠回しに――――。


「……では、あおいさんと。そうお呼びしても?」

「――!」


 下の名前で呼んでくれと。そう言ってるようなものだ。


「あ! あーちゃんだあー!」


 小さく一つ頷いていると、廊下に見知った三人の姿が。


「オウリくん、チカくん、ヒナタくん。おはようございます」

「はよ。何やってんの」

「各クラス委員長にクリスマスパーティーのプリントを渡して説明をしていたんです」

「朝からご苦労様」


「それでは」と違うクラスへと行こうとしたら、オウリが「えー。もうちょっといてよー」と葵の腕に抱き付いてくる。


「お、オウリくん。わたし、他のクラスにも行かないといけないので」

「むー! じゃあ、また生徒会室でね!」


 もしかしたら、葵が仮面を着けていることで距離を感じているのかもしれない。
 そうではないのだと、少しでも伝わるように、精一杯『仮面』の微笑みに気持ちを乗せる。


「はい。それではまた」

「うん! じゃあねあーちゃん!」

「頑張れよ」

「じゃあね下僕」

「それではまた金曜日、お待ちしてますね。あおいさん」

「はい。オウリくん、チカくん、ヒナタくん、レンくんっ」


 すると、ただ名前を呼び合っただけなのに、何故か三人に突っ掛かれた。


「えーっと?」

「何かおかしなとこがあったかな。氷川、柊、九条」

「なんでそんなに仲良さげなのっ!?」

「いつの間にそんな仲良くなったんだよっ!!」

「えっと、仲良くなったというか」

「手を繋いで一緒に走って登校する仲ではありますかね?」

「ちょっとレンくん、そんな言い方だと――」

「どういうこと」

「ひいっ……!」


 や、やっぱりこうなるよね。