すべてはあの花のために⑤


「(やっぱこうなるよね……)」


 わかってはいたけれど、黙っているのも嫌だった。
 何故なら、一刻も早く素になれるように頑張りたかったからだ。

 ……頑張らないと、いけないのだから。



 葵は空気を変えようと、大きくパンッと手を叩く。


「今日はこれで終わりだよね? 解散かいさーんっ!」


 そう言った葵は、アキラのそばに駆け寄る。


「ん? どうした葵」

「まだできてなかったから、挨拶に行きたいんだけど。お忙しいかな」


 みんなは耳をそばだてていた。


「ああ、そういうことか。そうだな……この週末なら大丈夫だと思う。それでも構わない?」

「うん! できればクリスマスまでに会っておきたいなって思ってたから」

「俺からも言っておこう。シン兄は来られるのか?」

「うーん、送り迎えには来るけど、流石に皇にはまだ無理かも。わたし一人ででも大丈夫?」

「ああもちろんだ。きっと父さんも喜ぶ」

「そっか! よかったー」

「あと、母さんにも会っていくか?」

「うんっ。ご挨拶したい!」


 会話の内容に、みんなの顔が険しくなる。


「はあー。やっとご挨拶に行けるよお~」

「いつでも遠慮なく来てくれ。でも、葵からそう言ってくれて、俺も嬉しい」

「あ、あのさ~? なんでアオイちゃんは、アキのご両親に挨拶行くのー……?」

「え? なんでと言われても……」

「俺と葵の仲だからな。当然だ」

「え? アキラくん、どういう意味?」

「両親に、ちゃんとお前を紹介したいってことだ」


 案の定、みんなから「えええ?!」と声が上がる。


「それだと意味合いが違ってくるよ。アキラくんが言いたいのは、『俺を助けてくれた……』的な話でしょう? まあ助けたわけではないけれど」

「それもあるけど、俺の大事な人で、好きな人で、将来をともに……もごもごもご」

「アキラくんがそんなこと言うから、みんながいちいち突っ込んでくるんだよ? 突っ込む方だって大変なんだよ?」

「ご、ごめん……」


 しゅんとしたアキラを見て、みんなは『取り敢えず、結婚の前の挨拶とかではないらしい』ということだけは理解したようで、ほっと息を吐いていた。

 こんなぐだぐだで今日は終わったけれど。事前に言ったとおり葵は、生徒会室以外ではみんなの前でもしっかり【仮面】を着け始めたのだった。