その頃葵たちは、シントが止めていた車に乗り込み、道明寺へと向かっていた。
「……っ。お嬢様。沖縄は、楽しゅうございましたか……?」
「……ええ。とても有意義な時間を過ごすことができました」
まだ執事でないといけないということは、【盗聴】されてるか。或いは【監視】されている。それなら葵も、崩すことができない。
シントといて、こんな息苦しいことなどなかった。生温い空気が纏わり付いて、気分が悪い。
信号に引っかかると、シントが大急ぎでサイレントモードにしたスマホへ何かを打ち始める。
「……それはようございました。もしよろしければ、どんな時間をお過ごしになったのか私にも教えていただけますか」
┌ ┐
見られてはない
俺に盗聴器が付けられてるだけ
だから、違う話をしながら
俺がここに来た理由を伝えるよ
└ ┘
シントから届いたメッセージ。
葵も声のトーンに気をつけながら、スマホに文字を打つ。
「もちろん大丈夫よ。……そうね。着いてすぐは大きな水族館に行ったわ」
┌ ┐
わかった
取り敢えずシントは
誰の命令でここへ?
└ ┘
「……そうなのですね。さぞ綺麗なところだったのでしょう。沖縄の海を再現しているそうですからね。こちらでは見られないような魚がいたのではないですか」
┌ ┐
旦那様だ
理由は……あー……いっぱいある☆
└ ┘
一旦車を走らせ、また信号で引っかかってシントがそう教えてくれる。
てっきり、突っ込みどころ満載のメッセージだから余裕があるのかと思ったけれど、シントの表情はそのおちゃらけた文章に反して、悔しそうに歪んでいた。
「……ええ。可愛らしいお魚さんがたくさんいたわ? イルカもウミガメもマナティーも、とても愛らしかったの」
┌ ┐
お父様……アザミ様からの命令なのね
取り敢えず一つずつ
順を追って説明してくれる?
└ ┘



