それから船は無事、日本最南端の島へと到着した。
「(……でも。ちょっと気分が……)」
でも、みんなに心配掛けるわけにもいかない。それに、葵自身もここへ来るのが楽しみだったので、そのまま一番南を目指す。
そして昼過ぎ、葵たちは日本の一番南の地へと到着した。
「綺麗なところだね、アオイちゃん」
「うん。そうだね」
そこから見えた景色は、本当に『美しい』の一言に尽きた。
「吸い込まれていきそうだね。あおいチャン」
「そう、だね」
そんなことを、アカネが言ってしまうのもわかる。ふっと、海の方へと引き寄せられてしまう感覚に陥ってしまうのだ。
「(……でも、ここは……)」
葵は、自分が立っている足下を……歩道へ、視線を落とす。
ここの遊歩道は二本の石の道で出来ているのだが、その道が絡み合っているように石が並べられていた。
「どうしたのあーちゃん」
眉を寄せていただけなのに、機微に敏感な彼が不安そうに声をかけてくる。
「(ほんと、ツバサくんもだけど、オウリくんのセンサーもピカイチだな)」
葵は小さく笑って答えた。「この遊歩道を見てたんだ」と。そしてこの場所の話をした。
「この石で出来てる二本の道、絡み合ってるように見えるでしょう?」
「うん。なんかヘビみたい」
「これには理由があるの。【二度と戦争によって国内と離れてしまわないように】って。そう、……願いが込められてるんだよ」
時々、激しく波立つ海を見つめながら。
「……わたしが来られるのも、ここまで」
「……あー、ちゃん……?」
遙か遠くの景色を、羨望の眼差しで見つめながら。
「そういえばお腹空かない? 朝ご飯早かったから、次の島でご飯食べよーっ!」
「え? あ、あーちゃんちょっと!」
葵はオウリの腕を取って、楽しげに歩みを進める。
「……だってわたしは、これ以上『 』を重ねたくはないのだから……」
その小さな呟きは、隣にいるオウリにさえ届かずに消えていった。



