すべてはあの花のために⑤


 それから船は無事、日本最南端の島へと到着した。


「(……でも。ちょっと気分が……)」


 でも、みんなに心配掛けるわけにもいかない。それに、葵自身もここへ来るのが楽しみだったので、そのまま一番南を目指す。
 そして昼過ぎ、葵たちは日本の一番南の地へと到着した。


「綺麗なところだね、アオイちゃん」

「うん。そうだね」


 そこから見えた景色は、本当に『美しい』の一言に尽きた。


「吸い込まれていきそうだね。あおいチャン」

「そう、だね」


 そんなことを、アカネが言ってしまうのもわかる。ふっと、海の方へと引き寄せられてしまう感覚に陥ってしまうのだ。


「(……でも、ここは……)」


 葵は、自分が立っている足下を……歩道へ、視線を落とす。
 ここの遊歩道は二本の石の道で出来ているのだが、その道が絡み合っているように石が並べられていた。


「どうしたのあーちゃん」


 眉を寄せていただけなのに、機微に敏感な彼が不安そうに声をかけてくる。


「(ほんと、ツバサくんもだけど、オウリくんのセンサーもピカイチだな)」


 葵は小さく笑って答えた。「この遊歩道を見てたんだ」と。そしてこの場所の話をした。


「この石で出来てる二本の道、絡み合ってるように見えるでしょう?」

「うん。なんかヘビみたい」

「これには理由があるの。【二度と戦争によって国内と離れてしまわないように】って。そう、……願いが込められてるんだよ」


 時々、激しく波立つ海を見つめながら。


「……わたしが来られるのも、ここまで」

「……あー、ちゃん……?」


 遙か遠くの景色を、羨望の眼差しで見つめながら。



「そういえばお腹空かない? 朝ご飯早かったから、次の島でご飯食べよーっ!」

「え? あ、あーちゃんちょっと!」


 葵はオウリの腕を取って、楽しげに歩みを進める。



「……だってわたしは、これ以上『 』を重ねたくはないのだから……」


 その小さな呟きは、隣にいるオウリにさえ届かずに消えていった。