少ししたら、寝息が聞こえ始める。
頭を起こして、横で眠る彼女を、愛おしそうにツバサは見つめた。
はあとため息をついて顔を正面へと向けると、前に乗っているアキラとアカネが恨めしそうな目で見つめ……睨んできていた。
「(……そういうんじゃ、ねえんだよ)」
どこか悔しそうな顔をして窓の外を見つめる姿に、二人も状況を把握したのか、険しい顔をしていた。
――――――…………
――――……
飛行機が着陸し、葵たちは船に乗り換えて日本最南端に行く予定だった。
「(あー。……不味い、かも)」
その船が、予想していたものよりも一回り二回り小さくて、足が竦む。
「(……大丈夫だ、大丈夫。この船は、十分大きいでしょう?)」
何度も何度も言い聞かせていると、後ろから軽くとんと誰かに押された。簡単に一歩前に踏み出すことができて、驚いて振り返る。
「つばさ、くん……」
「勇気、いるかと思ったんだけど……」
ツバサはそのまま葵の手を取り、引っ張って船に乗せてくれた。
「あ、ありがとう。ツバサくん」
「どうしたの? 船が怖いわけじゃないんでしょ? 今までたくさん乗ったんだし」
「うん。……船は、大丈夫なんだけどね」
「よくわからないけど……この船は大丈夫よ。だって、大きいじゃない?」
「――!」
心の内がバレたのかと思ったけれど、そうではなかったらしい。
言葉を選んでくれたツバサは、葵を安心させるためだけに言ってくれていたみたいだ。
「……うんっ。ありがとうツバサくん!」
笑顔でそういうと、ツバサは目を見開いた後すぐにそっぽを向いてしまったけれど、「どう、いたしまして……?」と聞こえはしたから良しとした。



