すべてはあの花のために⑤


「よいしょっと。……ツバサくんおはよう。もう支度しないと、みんな待たせちゃうよ?」

「……あ、おい……?」


 流石にもう起きないとみんなを待たせてしまうと思い、ベッドの端に腰掛ける。


「うんっおはよう! 急いで起きて? じゃないとまたみんなに怒られちゃうよ」

「え。あ……いまなんじ……いや。帰って支度か……」

「……大丈夫? まだ、ぼーっとしてる?」

「大丈夫。じゃ、また朝食の時に」

「う、うん。部屋まで帰れる? 送ろうか?」


 亡霊のように、ふらふらと立ち上がるツバサを、部屋の扉まで見送りに行く。


「お前付いてきたら、俺ますますみんなにキレられるんだけど……」

「うん。そうなんだろうけど。……大丈夫? 熱とかない?」


 少し苦しそうで、顔もどこか少しだけ赤いような気がした。


「いや。……別に熱とかはねえ」

「もし何かあったら言ってね。すぐに駆けつけるから」

「ん。ありがと。……それじゃあまたあとで」

「うん。気をつけて」


 想像以上に、静かに扉が閉まる。だから、拒絶されたわけではないことはわかるけれど。


「……大丈夫かなツバサくん」


 一体何があったのか。彼が、あんなにぼけーっとしてるなんて珍しい。
 悩んでいると、葵のお腹から盛大な空腹の音が。「お、お腹が減って力が出ない~……」と、ベッドに倒れ込み、考えるのはやめてもう少しゆっくりしておくことにした。