その言葉を聞いて安心したように、ツバサはすぐに寝息を立て始める。
「ありがとうねツバサくん。ずっと心配して、起きててくれたんだね」
ツバサの背中を、とんとんとやさしく撫でてあげた。
「(でも今日は最終日だから、ツバサくんには申し訳ないけど、6時には起こすぞ~……?)」
今度は彼の頭を、起こしてしまわないように撫でる。
「(……ツバサくん。ちょっとだけ震えてた。わたしは、何をしたんだろ)」
『お前もがいい』……そう言った声も腕も、震えていた。
「ありがとうツバサくん。そばに付いていてくれて。それから……ごめんなさい。つばさくん。わたしなんかのそばにいるせいで。君に、心配を掛けてしまう」
それでももう、自分が泣いてみんなに心配を掛けてしまうことはしたくなかった。
「(もう泣かない。お山に、置いてきたんだから)」
少し顔色が悪くなっている彼の頬に、指を添える。
「それでもそばにいたいと思うわたしを。どうか。どうか許して」
葵もアラームをセットして、もう一眠りすることにした。
――――――…………
――――……
「……んしょっと」
時刻は5時半。ツバサを起こしてしまわないよう、葵はそっとベッドから降りる。
「(あれ。今思ったけど、男女で一緒のベッドで寝るのって不味いんじゃ……)」
そんな重大なことを今ふっと思ってしまった葵だが。
「(ま、いいか。別に何もなかったし)」
男としては重要な問題だが、葵にとっては全然問題なかったらしい。ちなみにシントは、葵の中で数にも入っておりません。あしからず。
「(さてと。ツバサくんが起きてしまう前に、少しでも荷物の整理と支度と、その他諸々しておこうかな。……今思うけど、普通に考えたら移動だけでかなりの出費なんだけど。桜専用の飛行機に船……お金持ち学校でしかなせない技だよね、うん)」
取り敢えず身形を整えることにした葵は、ツバサが起きてきたら不味いので、バスルームに行ってさっと着替える。帰ってきたタイミングで、ツバサがむっくりと起き上がった。
「あ。おはようツバサくんっ」
部屋のカーテンを開けて、朝日を部屋の中に入れる。
「あんまり寝させてあげられなくてごめんね。でも行きの飛行機の中だったら、少しは寝られると思うから」
ツバサはまだ寝起きでぼーっとしていた。
「……ツバサくん? 聞いてる~? ツバサくんの準備がどれくらいかかるか知らないけど、わたしはもう済んじゃったよー?」
「……ー、ーー……」
「……ツバサくん?」
「ー。ーー……?」
先程から、ぼーっとしながら何かを話している。けれど音になっていなくてわからない。



