すべてはあの花のために⑤


「そしたらもう、アキからカナに、カナから茜に伝染したんだと思うわ。……なんか、殺気がしたから」

「な、なんだか申し訳ない。わたしが呼んだのに」

「アタシは別にいいの。アンタの話聞きに来たんだから。……それよりも、先に髪乾かしてあげるから座りなさい」


 ツバサに背中を押され、葵はドレッサーの前に。


「え?! いいよ! 早く話さないと寝るのが遅くなっちゃう!」

「何言ってるの。髪は女の命なの。乾かさないとすぐ痛んじゃうんだから。いい子で待ってなさい」


 それだけ言って、ツバサは髪を乾かす準備をし始める。


「……あれ? これでもうお礼の代わりでいいんじゃ……」

「こんなもんで礼になるか」


 ばっさりと切り捨てられた葵は、ツバサに髪を乾かしてもらった。


「よし。完璧」

「うおー! トゥルントゥルンだ!」


 さらさらと言うよりも、そう表現した方がいいくらい保湿たっぷり。まるで美容院に行ったみたいだ。


「ありがとうツバサくんっ」

「いいえ。どういたしまして」


 そうして、今度は葵が、用意していたお茶でツバサをおもてなしする。


「カフェイン入ってないから大丈夫だと思う」

「ありがと。いただくわ」

「はーい。どうぞ」


 それからゆっくり、葵は話し始めた。



「えっとね? 最近もつらいとか苦しいとか、そういうのはあったんだけど、キサちゃんとかユズちゃんにも聞いてもらったんだ」

「もしよかったら、どうして苦しんでたのか聞いてもいい?」

「えっと。……好きって気持ちに、押し潰されそうだったの」

「……押し潰される?」

「ツバサくんは、告白されたことってある?」

「あるよ」


 即答に驚いたけれど、「そっか」と小さく笑って続きを話す。


「その、相手の気持ちがあまりにも温かいのと同時に、すごく、苦しくなってしまって」


 そのことを思い出すように、葵は目を閉じる。