「あ」
「どうしたの?」
「アンタ、最近苦しくないの?」
「え?」
「言ったじゃない。何も事情は聞かないから、苦しくなったら、しんどくなったらアタシが聞いてあげるって」
それが、自分の中に膨らむ感謝の代わりになるとは思えないけれど。
「言ってこないから、ちょっと心配だったりするのよ。抱え込んでないかって」
「ツバサくん……」
「さっきお礼言わせてもらえなかったから、少しくらいアンタの役に立ちたいんだけど」
「え?! だ、だってそれは当たり前で」
「でもお礼言いたいんだよ。でも言わせてくれなくてモヤモヤしてるから、どうしようかと思って悩んでるんだって」
「え。……じゃあ、しょうがないから……っ。言っても。いいよ……」
「いや、血を吐くように言われても。嫌なら言わないわよ」
「えー。ならどうしたらいいのー……」
今度は二人して悩んでしまったけれど、「じゃあ、ツバサくんの迷惑じゃなかったら……」と、彼女が提案してくれる。
「いやアンタ、それ……」
「え? やっぱりダメかな。どうしよう。他に思い浮かばなくて……」
「アタシはいいけど。……もうちょっと気をつけなさいよ」
「へ? 何が?」
「何でもないわよ。ほら、ホテル行くわよ」
首を傾げる彼女の背中を押しながら、大きなため息を落とす。
『……夜、わたしの部屋に来てくれる?』
「(聞いたのが、俺だけで心底よかった)」
もう一度大きなため息を落として、ツバサはフロントまで足を速めたのだった。



