すべてはあの花のために⑤


「あ」

「どうしたの?」

「アンタ、最近苦しくないの?」

「え?」

「言ったじゃない。何も事情は聞かないから、苦しくなったら、しんどくなったらアタシが聞いてあげるって」


 それが、自分の中に膨らむ感謝の代わりになるとは思えないけれど。


「言ってこないから、ちょっと心配だったりするのよ。抱え込んでないかって」

「ツバサくん……」

「さっきお礼言わせてもらえなかったから、少しくらいアンタの役に立ちたいんだけど」

「え?! だ、だってそれは当たり前で」

「でもお礼言いたいんだよ。でも言わせてくれなくてモヤモヤしてるから、どうしようかと思って悩んでるんだって」

「え。……じゃあ、しょうがないから……っ。言っても。いいよ……」

「いや、血を吐くように言われても。嫌なら言わないわよ」

「えー。ならどうしたらいいのー……」


 今度は二人して悩んでしまったけれど、「じゃあ、ツバサくんの迷惑じゃなかったら……」と、彼女が提案してくれる。


「いやアンタ、それ……」

「え? やっぱりダメかな。どうしよう。他に思い浮かばなくて……」

「アタシはいいけど。……もうちょっと気をつけなさいよ」

「へ? 何が?」

「何でもないわよ。ほら、ホテル行くわよ」


 首を傾げる彼女の背中を押しながら、大きなため息を落とす。



『……夜、わたしの部屋に来てくれる?』

「(聞いたのが、俺だけで心底よかった)」


 もう一度大きなため息を落として、ツバサはフロントまで足を速めたのだった。