ぐっとツバサの腰を曲げ、彼の頭を抱えて抱き締める。
「――聞きなさいツバサくん」
葵の言葉は怒気が含まれていた。だけど、それでもどこかあたたかい。
「今まで君がしてきたことは、その時できた君の最善策。それを否定したらダメだ。その時の自分が消えるぞ。今のツバサくんが消える」
「……っ」
「ツバサくん。その時の最善策のまま、君は最後まで行くの? 今まで助けられなかったのに、それで本当に救える?」
「……わ。かってる……っ」
「うん。今のツバサくんなら、きっとできるよ」
「……ん」
ツバサは、縋り付くように葵を抱き締めた。
「今まで頑張ってきたことを糧に、少しずつ方法を変えなさい。君にならできる。大丈夫だ。大丈夫」
「……っ、うんっ」
「一気に変えなくていいんだ。女性でいることをやめろなんて言わないよ。君が考えて考えて、少しずつでも助けてあげられるようにしていったらいいんだ」
ツバサの頭を解放して、にっこりと笑う。
「ここまで必死に努力してきて、めちゃくちゃ美人になったんだ! ツバサくんならできる!」
「まあ元がいいから、しょうがないわよね~」
「立ち直り早っ」
「だってアタシだし~?」
「ははっ。そうだった」と、二人して笑い合った。



