「可愛いものを持っていないと落ち着かないの。この恰好だって、ただの自己満足よ」
「じゃあツバサくんは、どんなものを持ってたら安心するの?」
「教えて?」と、葵はツバサの手を引いて店の中へと連れて行く。
「……可愛いって言っても、ぶりぶりしたものじゃないの」
そう言ってツバサは、可愛いけどシンプルで、アンティークの鍵のアクセサリーを見ている。
「あ。可愛いね」
「外国製のアンティークはドストライク。木製で、褪せてるようなものも安心するの」
「ちょっと大人っぽい感じだね」
「そうね。……ちょっと背伸びしてたのかしらね」
ツバサの表情は愁いを帯びていた。
「ツバサくんが安心できるなら、わたしはそれでいいと思うよ?」
「でも、どうやってもアタシは男なの」
気に入ったのか、鍵のアクセサリーを買って店を出たツバサに、慌てて付いていく。
「アタシは男だから。女にはなれないから……」
以前も『大丈夫だ』と、言い聞かせていた。
「だから、女に見えるよう、どんなことだって努力した」
「えっ? ちょ……っ!」
コンパスも違えば、歩くスピードが速くて付いていくので精一杯。その上下り坂になっていて、ずんずんと彼は進んでいく。
「美容関係のことだって必死に調べた。試した。化粧だって覚えた。髪だって伸ばした。常に努力したわよ。女に見えるように。これでもかと言うほど、女子力を上げるのに必死だった」
「……っ、つ。つばさく……っ」
ほぼ葵は走ってる状態だ。体力はあまりない葵だが、だからといってここで彼を一人にはできない。
「仕草だって何だって、人に指差されたって気味悪がられたって、女になりきってきたの」
「つ、つばさ、くんっ。……っ」
「それでも、……アタシじゃダメなのよ」
「はあ。はあ。……つ、つばさ。くん……?」
どんどん突き進んでいって、海沿いで行き止まると、ツバサはようやく止まった。
やっぱりどこか苦しそうなツバサの背中を撫でてあげたかったけれど、その前に手を置かせてもらって必死に息を整える。
「え。ど、どうしたのよ」
「それは。こっちの。せりふ。なんだけど?」
「どういうこと?」
「自分の足の長さ考えて……?!」
「そ、それは悪かったわね?」
「わかってないのに謝らないで?!」
葵に怒られたツバサは、ようやく状況を把握したのか、きょろきょろと周りを見渡した。
「葵、ここどこ?」
「知るわけないじゃん! ツバサくんに付いていくのでわたし必死だったんだからね!」
「そ、そう。……悪かったわ。ぼうっとしてた」
「その割りにはずっとなんか喋ってたけどね?!」



