翌日、フローラは休学届を出して実家であるハインツェ伯爵家の屋敷へと向かっていた。
「ねえねえ、これからどこいくのー? おでかけぇ?」
馬車の中で椅子に座って足をバタバタさせながら、ルイトは無邪気に尋ねた。
「ううん、これから私の実家に行くんですよ!」
「じっか?」
「ええ、おうちです」
「フローラのおうち! ぼくいきたい!」
(よかった、機嫌も良さそうだし、屋敷まで持ちそうね)
そんな風に思っていたのだが、そう子どもの機嫌は思い通りにいくものではなかった。
「わあああー! もうでる! ここやだっ!!!」
「もう少しで着くから、待ってくれませんか?」
「やだ! あそべないし、いつものかくれんぼしたい!」
「かくれんぼは屋敷に着いたら、たくさんできますよ! ほら、これ、ルイト様の好きなおもちゃです!」
「いらないっ!」
フローラの渡したクマのぬいぐるみは、無惨にも投げられる。
(うう……ルイト様、いつもは機嫌もいいことが多いのだけど……)
「やだ! やだ! おりる!」
そう言って揺れる馬車の中でフラフラと走りながら、扉に手をかけた。
「ルイト様っ!!」
鍵が甘く、勢いよく扉が開いてしまう。
ルイトはなんとか馬車の扉のところで止まっているが、扉は半開き。
(このままでは落ちてしまう!)
フローラは急いで立ち上がり、ルイトを抱き寄せようと彼のほうへと飛び込む。
「ルイト様っ!」
「フローラ! 怖い……」
扉の隙間から漏れ入る風と馬車のスピード感に怖さを感じたルイトは、フローラの方へと踏み出すこともできずにそのまま足がすくんでいる。
その時、大きな石に乗り越えた馬車は、大きく揺れた。
「あっ!」
ルイトはその衝撃で馬車から放りだされそうになる。
「ルイト様っ! すみません、馬車をとめてください! 早く!」
御者が急いで馬車を止めようとするが、馬がうまく止まらない。
(どうして!?)
先程の石を超えたあたりで、馬は蹄が外れてしまい、フラフラとしながら制御できなくなっていた。
やがて、大きく揺れたまま、馬車は走り続ける。
(このままじゃ……)
「わああああーーー!」
泣き叫ぶルイトへフローラは必死に手を伸ばす。
(あと少し……!)
傾く馬車の椅子に捕まりながら、なんとかルイトを助けようとする。
「ねえねえ、これからどこいくのー? おでかけぇ?」
馬車の中で椅子に座って足をバタバタさせながら、ルイトは無邪気に尋ねた。
「ううん、これから私の実家に行くんですよ!」
「じっか?」
「ええ、おうちです」
「フローラのおうち! ぼくいきたい!」
(よかった、機嫌も良さそうだし、屋敷まで持ちそうね)
そんな風に思っていたのだが、そう子どもの機嫌は思い通りにいくものではなかった。
「わあああー! もうでる! ここやだっ!!!」
「もう少しで着くから、待ってくれませんか?」
「やだ! あそべないし、いつものかくれんぼしたい!」
「かくれんぼは屋敷に着いたら、たくさんできますよ! ほら、これ、ルイト様の好きなおもちゃです!」
「いらないっ!」
フローラの渡したクマのぬいぐるみは、無惨にも投げられる。
(うう……ルイト様、いつもは機嫌もいいことが多いのだけど……)
「やだ! やだ! おりる!」
そう言って揺れる馬車の中でフラフラと走りながら、扉に手をかけた。
「ルイト様っ!!」
鍵が甘く、勢いよく扉が開いてしまう。
ルイトはなんとか馬車の扉のところで止まっているが、扉は半開き。
(このままでは落ちてしまう!)
フローラは急いで立ち上がり、ルイトを抱き寄せようと彼のほうへと飛び込む。
「ルイト様っ!」
「フローラ! 怖い……」
扉の隙間から漏れ入る風と馬車のスピード感に怖さを感じたルイトは、フローラの方へと踏み出すこともできずにそのまま足がすくんでいる。
その時、大きな石に乗り越えた馬車は、大きく揺れた。
「あっ!」
ルイトはその衝撃で馬車から放りだされそうになる。
「ルイト様っ! すみません、馬車をとめてください! 早く!」
御者が急いで馬車を止めようとするが、馬がうまく止まらない。
(どうして!?)
先程の石を超えたあたりで、馬は蹄が外れてしまい、フラフラとしながら制御できなくなっていた。
やがて、大きく揺れたまま、馬車は走り続ける。
(このままじゃ……)
「わああああーーー!」
泣き叫ぶルイトへフローラは必死に手を伸ばす。
(あと少し……!)
傾く馬車の椅子に捕まりながら、なんとかルイトを助けようとする。



