「フローラ・ハインツェ伯爵令嬢よ。本日をもって、この私、ディーター・キルステンは貴殿との婚約を破棄する!」
卒業式という晴れの日に合わない言葉が講堂の中に響き渡った。
たった今、婚約破棄を宣言した公爵令息である彼の同級生たちも驚き、ひそひそと話し始める。
「まあ、聞いた!? ついにあの伯爵令嬢、婚約破棄されたわよ!」
「当たり前よ~! だって、父親一代でいきなり伯爵にまで爵位があがって……それまで田舎者のハインツェ男爵家って言われてたのに……」
「ほんとよね~! まあ、そもそも身分が違いすぎなのよ。私たち上級貴族の仲間入りは無理だったってことね……」
ディーターと同じクラスの三人の令嬢たちが彼女らの少し後ろにいたフローラに聞こえるように言う。
フローラはじっと舞台上にいる元婚約者を見つめ、何も言わない。
「ふんっ! 驚き焦って、声も出ないかフローラ! まあ、ジェシカとか比べ物にならないほどお前は貧乏くさいし、私の未来の妻として相応しくない行動ばかりとっていたからな」
「その辺にしておいてくださいな。あまりにも、フローラが可哀そうですわ」
ディーターの腕に自分の手をちょんと乗せて、ジェシカは言う。
「さすがは、ジェシカ。あんな貧乏男爵令嬢に気遣いを……。やはり、君はよくできた人だ」
彼の言葉を聞き、彼女は「そんなことありませんわ」と小さな声で呟きながら言う。
「ディーター様には、ジェシカ様がお似合いだわ! ええ、容姿端麗、艶やかな黒髪も美しくてお二人が並ぶと絵になりますわ!」
「姿だけじゃありませんわよ! 国をお支えしているアンデ侯爵家のご令嬢であらせられますし、教養も素晴らしいですわ!」
口元を抑えながら令嬢たちは話しているが、その声はジェシカにも、ディーターにも、そしてフローラにも聞こえている。
そして、ディーターは大きく右手をあげてさらなる宣言をする。
「見ろ、このジェシカの人望と素晴らしさを! 彼女こそ私の本当の婚約者に相応しいではないか!」
その声に講堂中から声援が沸き上がる。
「そうだ! ジェシカ様がいい!」
「素晴らしい! ディーター様に相応しいお方だ!」
そんな声を聞いて、ジェシカは微笑んだ。
そして、最後の宣言をディーターはおこなった。
「本日から、ここにいるジェシカが私の婚約者だ。フローラは我が幼き弟をたぶらかし、弟と遊ぶばかり。私の未来の妻としての教育などまるで受けようとしない。そんなフローラは、私に相応しくない。フローラ、何か言いたいことはあるか?」
ディーターの問いかけに皆の視線がフローラに向く。
彼女は手を繋いでいた小さな子の視線に合わせてしゃがんで伝える。
「ルイト様、少しお待ちくださいね」
「うん!」
フローラはルイトに優しい笑みを向けると、さっと立ち上がってディーターのほうへ向く。
そして、彼女はドレスの裾をちょんと持つと、品よくお辞儀をした。
卒業式という晴れの日に合わない言葉が講堂の中に響き渡った。
たった今、婚約破棄を宣言した公爵令息である彼の同級生たちも驚き、ひそひそと話し始める。
「まあ、聞いた!? ついにあの伯爵令嬢、婚約破棄されたわよ!」
「当たり前よ~! だって、父親一代でいきなり伯爵にまで爵位があがって……それまで田舎者のハインツェ男爵家って言われてたのに……」
「ほんとよね~! まあ、そもそも身分が違いすぎなのよ。私たち上級貴族の仲間入りは無理だったってことね……」
ディーターと同じクラスの三人の令嬢たちが彼女らの少し後ろにいたフローラに聞こえるように言う。
フローラはじっと舞台上にいる元婚約者を見つめ、何も言わない。
「ふんっ! 驚き焦って、声も出ないかフローラ! まあ、ジェシカとか比べ物にならないほどお前は貧乏くさいし、私の未来の妻として相応しくない行動ばかりとっていたからな」
「その辺にしておいてくださいな。あまりにも、フローラが可哀そうですわ」
ディーターの腕に自分の手をちょんと乗せて、ジェシカは言う。
「さすがは、ジェシカ。あんな貧乏男爵令嬢に気遣いを……。やはり、君はよくできた人だ」
彼の言葉を聞き、彼女は「そんなことありませんわ」と小さな声で呟きながら言う。
「ディーター様には、ジェシカ様がお似合いだわ! ええ、容姿端麗、艶やかな黒髪も美しくてお二人が並ぶと絵になりますわ!」
「姿だけじゃありませんわよ! 国をお支えしているアンデ侯爵家のご令嬢であらせられますし、教養も素晴らしいですわ!」
口元を抑えながら令嬢たちは話しているが、その声はジェシカにも、ディーターにも、そしてフローラにも聞こえている。
そして、ディーターは大きく右手をあげてさらなる宣言をする。
「見ろ、このジェシカの人望と素晴らしさを! 彼女こそ私の本当の婚約者に相応しいではないか!」
その声に講堂中から声援が沸き上がる。
「そうだ! ジェシカ様がいい!」
「素晴らしい! ディーター様に相応しいお方だ!」
そんな声を聞いて、ジェシカは微笑んだ。
そして、最後の宣言をディーターはおこなった。
「本日から、ここにいるジェシカが私の婚約者だ。フローラは我が幼き弟をたぶらかし、弟と遊ぶばかり。私の未来の妻としての教育などまるで受けようとしない。そんなフローラは、私に相応しくない。フローラ、何か言いたいことはあるか?」
ディーターの問いかけに皆の視線がフローラに向く。
彼女は手を繋いでいた小さな子の視線に合わせてしゃがんで伝える。
「ルイト様、少しお待ちくださいね」
「うん!」
フローラはルイトに優しい笑みを向けると、さっと立ち上がってディーターのほうへ向く。
そして、彼女はドレスの裾をちょんと持つと、品よくお辞儀をした。



