どうして李和を、…お姉ちゃんだなんて呼びたくなかったのか。
その答えは李和が中学生になってからわかった。
ある日学校から帰ると、やたら機嫌のいい李和がいて…
俺にこういったのだ。
好きな人が出来たと。
その人は頭がよくて、顔もよくて、背も高くて、学校で一番人気なのだと。
俺の前で見せたことのないような笑顔で、甘い声で、頬を桃色に染めて、嬉しそうに報告してきて。
嗚呼、なんて…残酷なんだろうか。
……聞きたくないと思った。
黙っててほしかった。
そしてその時、わかってしまったんだ。
俺は李和のことを、姉としてじゃなく…
ひとりの女の子として、好きなのだと。
同時にわかったことがもう二つ。
この想いは、届かない。
この恋は、実らない。
