俺の実の母親は、俺が五歳の頃に亡くなった。
確か乳癌で、医者に診てもらったときにはもう既に手遅れだったらしい。
優しくて、でも怒ると怖くて。
…そんな母親が、母さんが、俺は大好きだった。
だからそんな…母さんが亡くなって、活発だった俺は次第に塞ぎ混むようになってしまった。
別に友達がいなかったわけじゃない。それなりに仲のいいやつとか、よく遊ぶやつとかはいた。父さんとの関係も決して悪いものではなかった。
ただ、…作り笑いがやけに上手かったなって、今になれば思う。
不自由なことはなかった。
まぁ0ではなかったけど、授業参観や三者面談、運動会や学芸会、学校の行事には必ず父さんが来てくれたし、料理だって俺のために頑張って作ってくれた。
だから俺は大人になるまで父さんと二人でひっそり生きていくのだろう、
そう、思っていた。
あの日までは。
