『ってかいつまでも半裸で歩くんじゃないわよ』
取っ手の取れる噂のフライパンで、ニラやら葱やらその他諸々とレバーを炒め合わせていくと、たちまち食欲をそそる香りがキッチンにたちこめる。
うんうん。いいにおーい!
よく意外だねって言われるけど、料理は私の特技のひとつ。
自分で言うのもあれだけどいいお嫁さんになれると思うんだけどなぁ………たぶん。
「今日レバニラ?」
『そう。…だから服着なさいってば』
私の言葉に「後でね」と適当に返し、首から下げたタオルで乱雑に頭をガシガシとふきながら、陽は私のそばに並んだ。
…かと思えば、特に何もせずただ私の動きをじっと見ているではないか。
…何してるのこの弟は。
『陽?』
普通に気が散るし、邪魔だったからリビングへと追い出してやろうと隣に立つ陽に視線を流す。
……あ。
ふと、大きくなったな…なんて思った。
165あたりの私より10cm以上は高いであろう陽は、顔立ちもかなりいいのでモテること間違いなし。
現に、バレンタインなんかは抱えきれないほどのお菓子をもってかえってきたりするし。
栗色の髪は触れると柔らかそうで、細く見えるのに筋肉質で引き締まった身体。
そんな意外とハイスペックな弟は、これまでどういうわけか彼女を家に連れてきたことがない。
いや、もしかしたら彼女いるのかもしれないし連れてきたくないだけかもしれないけど、…そんな話今まで一度も聞いたことがない。
