『あーーっっ腹!立つ!なぁ!!』
ダァンッ!!
ニラを切る力が、ついうっかりちょっとだけ強くなり、包丁かまな板かはたまたその両方からか、とにかく派手な音が鳴った。
さっきの学校での出来事を思いだし、隠しきれない苛立ちが込み上げてくる。
もーーー!!
永井藍斗め!!
私のことはほっといてよ!!
内心イライラしながらも、手際よく料理をする手は止まらない。
「李和、なに今の音」
『はぁ!?…って、陽か』
「俺以外誰がいんだよ」
風呂上がりで半裸の我が弟は、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しつつ呆れた視線をこのお姉さまに向けていた。
小憎たらしいやつめ。
その顔にも腹立つわ。
「つか、だからさっきの音なに?」
『なっ、んでもない』
「誤魔化すの下手すぎな」
ハッと鼻で笑う陽に、無言で包丁をちらつかせると、瞬時に顔色を変えて黙りこんだ。
ふん。ばぁか。
