こんにゃろう!
まだ死んでたまるか!
一周まわって、逆に闘争心が芽生えてきた。
“何がなんでも”私は平穏に過ごすのよ!
誰であっても邪魔はさせない!
『あの、本当にぶつかってしまい申し訳ありませんでした。…では』
にこっと、わかりやすくお愛想笑いを貼り付けて永井藍斗の視界から逃れようと一歩、足を踏み出した
……ら。
「天宮李和」
ーーーーーえ。
不意に名前を呼ばれ、反射的に立ち止まる。
私を呼び止めた張本人である永井藍斗は、こちらを一瞥することもなく、ただ無機質に言葉を放った。
「お前、何か企んでるんじゃないだろうな」
《おかしなことをしたら許さない》と、直接口に出しはしなかったけれど、言葉の裏には確かに微量の殺気が滲んでいた。
……………………………は?
何だって?
思わず、ポカン…と口が勝手に開いた。
何かと思えば……そんなこと?
何かもっとヤバイことを言われるのかと身構えちゃったじゃん…!
呆気にとられ、ふっ…と気が抜けるのがわかった。
それにしたってただの女子高生に殺気放つかね!?!どういう教育うけてきたの!!?
前の私なら怖くて震えてたかもしれない。
でも今はそんなの怖くない。だってそれより怖いのはこの街から物理的に消されることだから。
っていうか近づかなくなっただけで何でそんなこと言われなきゃならんのだ!
めんどくさいな!!
永井藍斗は内心興奮状態の私のことなど知らずに、振り返ることなくスタスタ進んでいく。
そんな彼の背中に大声で言ってやりたかった。
そんなに企んでほしいなら何か企んでやろうか?と。
