そして時は進み放課後。
革製のスクールバッグに必要なものだけ詰めて、人もまばらとなった教室を後にする。
今日はお母さん帰り遅いらしいからご飯作らなきゃなー。
えーっと、レバニラ炒め食べたいでしょー、かき玉スープ飲みたいしー、それから炒飯も…ーー
献立を頭の中で考えながら、半ば上の空で廊下をてくてくと歩く。
…それがいけなかった。
ーーーーードンッ!!
『ぉあっ…!』
「、」
前をろくに見ずに考え込んで俯いてたもんだから、誰かにぶつかってしまった。
一瞬、びっくりして呆けてしまったけどすぐにハッと我に返り、謝らなきゃ!と勢いよく顔を上げる。
『あ、すみませんでし、』
ーーパチリ。
相手と目が合った。合ってしまった。
『た………』
言葉尻に勢いがなくなって、私はただ目を見開いてその場に固まった。
「お前…」
少し前までは…大好きで大好きで仕方がなくて、毎日甘い猫なで声を出しては少しでも相手にしてほしくて間違った努力をした。
———…目を奪われるような眩しい金髪に、憂いを帯びた黒鳶色の瞳の持ち主。
何度アタックしても、私を視界に入れてくれなかったその人…
永井藍斗が、そこにいた。
