『なんっ、はっ、ウッ…!』
何で猫がこんなとこにっ!と言ったつもりだったのに、目の前の魔性の黒いちびっこのせいで語彙力が何処かへ飛んでいった。
『かわいい~、おいで!ほら、おいで~!』
怖がらせないように声のボリュームを抑え、指先でちょんと猫に触れる。
アッッもふもふっっ!!
たまらねぇ!!
へへっ、へへっ、とだらしなくデレデレしながら、手のひらにすり寄ってきた猫に胸のキュンキュンが止まらない。
喉元を指で擽ると、グルグルゴロゴロ喉を鳴らして目を瞑る。
『お前はどこから来たの?』
ふふっと笑えば、猫は一瞬目を開け私の姿を確認すると、また気持ち良さそうに目をつむった。
思わぬところに癒しがあるんもんだな…。
私以外の人間が誰もいない中庭で、かわいい猫と戯れる。
ああ、なんて。
有意義な時間だろう。
とにかく子猫を撫でてモフりまくってるとあっという間に予鈴が鳴ってしまい…。
…もっと撫でてたかったな。
名残惜しく思いながらも子猫からすっと手を離した。
ねこちゃん…私が戻ると寂しいかもしれないけどごめんね…。なんて言いながら私が寂しくなっちゃうな…。
のそのそと立ち上がると、ベンチに置いていたランチバックを手に取り中庭を後にしようと一歩踏み出す。
また会えたら遊んでね!
そんな想いでバッとさっきまで子猫と戯れていた茂みを振り返ると、
『おらへんやないかい』
薄情なかわいこちゃんはすでにそこにはいなかった。
