転生したら不良と恋する恋愛小説の悪女でした。





ああ、なんて。



あたたかい。




その温もりに、胸が震えた。




昨日までの私なら、こんな風に思うことはなかったはずだ。



だけど、…夢の中で見た“前世の私”には、両親がいなかった。そう。誰も、…いなくて。

遠い親戚の優しい叔父さんと過ごしていたのだ。

だから家族は、叔父さんだけだった。




“前世の私”…叔父さんになにも言わず死んじゃったんだな…。





人生、いつ何が起こるかわからない。



私が前世の記憶を取り戻したことだってそう。

こんなの予期していなかった。



だけど予期せぬ事態っていうのは急に訪れるものだ。




元気に挨拶を交わした人が、次の日死んじゃうかもしれない。 

喧嘩して出ていった恋人が、二度と帰ってこなくなるかもしれない。




誰にも未来は見えないから、その予期せぬ事態に備えてる人なんていなくて。




『お母さん、』



だからこそ私は、



『私を生んでくれてありがとう』



ーーーーーー胸が震えたように、出した声もまた、少し震えてた。



今の私と、今の私の大好きな人を、大切にしようって思ったんだ。