陽ーーー本名は天宮陽多。
中学三年生。
私と陽はまぁわりと仲のいい姉弟だと思う。
顔を合わせれば下らない言い合いばっかしてるけど、二人で出掛けたりもするし。
……そこは、あの小説とは違うところだった。
小説の中の天宮姉弟は、確かめちゃくちゃ仲が悪くて、下らない言い合いなんて到底するような仲じゃなかったはずだ。
うーん、おかしいな。
私と陽の関係と違う。
でもあれは小説で、これは現実なんだから違って当たり前なのか…?
それに、小説ではあのろくでもない姉と同じ空間にいたくなくて弟は家を飛び出すんだけど、その飛び出した先…ーー夜の繁華街で少女と出会い一目惚れをするという話の流れになっていたはず。
なのに
「ブスのくせに…」
この弟は私と喧嘩したとしても出ていくどころか逆に私を追い出すにちがいない。
なぜならバカだから。
隣でブツブツ何か言ってるバカを無視してトーストにかぶりついた。
あーあ。黙ってればかっこいい自慢の弟なのに。
悪女顔の私と全く似ておらず、見た目だけ好青年な弟とは血の繋がりはない。
私はお母さん、弟はお父さんの連れ子で、両親が再婚した五年前に姉弟となった。
昔は人見知りで可愛かったのに何でこんな生意気に育ったかなー!
