そして···
カチャッ、と。
リビングの扉に手をかけたーーー瞬間。
『……はっ』
私は、重大なことに気づいてしまった。
思わず顔を覆ってその場に立ちすくむ。
『…ぐっ!どうしようっ…学校いきたくないっ…』
くぐもった声が、指の隙間からもれてった。
ああっ、やだやだ、神様…。
私がこんなにも憂鬱になるのにはわけがある。
実は私、つい昨日まで好きで好きで大好きで仕方がなかった人がいたのだ。
彼の名前は永井藍斗。
私と同学年の2年生で、隣のクラスに在籍してる。
目を奪われるような眩しい金髪に、憂いを帯びた黒鳶色の瞳の持ち主。
そんな彼は、暴走族【鳳凰】の総長であり、この街の頂点に君臨する男だ。
ここまで言えばわかるかな?
ーーそう。彼は、あの小説の不良少年のトップの男。
ええそうです。
つまり私は、自分を恐ろしい運命に後々陥れることになる男に惚れていたのです。
まぁこれに関しては自業自得なんだけどね!
だって知らなかったんだもん!
顔めっちゃ好みだったんだもん!
だけど、記憶を取り戻したせいか…おかげか。
彼と関わることで私自身に間違いなく悲劇が訪れるということがわかってしまったわけだ。
それに気づいた瞬間、私の情熱的な恋心は光の速さでさっていった。
さよなら私の恋心。またいつかどこかで。
