きみと、二人だけの卒業をする。


「あの...こんにちは!俺、隣の席の(しょう)です!」

「...あ、初めまして、陽菜(ひな)です」

初めて会ったのに、「この人だ」となぜか思った。

運命の人というか、私の一目惚れかな。

すごいドラマチックだけど、ほんとに雷に打たれたみたいにビビっときた。

ふっと花が咲き誇るような笑顔が離れなくて、その日はずっと翔のことを考えていたぐらい。

翔は次の日も、その次の日もずっと話しかけてくれて、話す度に「好きだなぁ」と思っていた。

ほとんど毎日話して、翔といるとすごく楽しかった。

席替えをして席が離れたときだって、そんなのお構い無しに私と一緒にいてくれた。

クラスの中心すぎることもなく、端っこにいるわけでもなく、優しくて面白い翔がずっと好きだった。

意外と頭が良いところとか、涙脆いところとか、さりげない優しさがあるところとか。

休日に遊んだりもした。海でお互い水をかけあって、映画で二人で泣いて、初詣でおみくじを引いた。

翔と過ごした一年は、長いようで短くて、だれよりも離れてしまうのが惜しかった。

もう会えなくなるから、きっと連絡頻度だって少なくなるだろうし、こうして遊ぶことだってできなくなる。