「日向くんはもしかして、葵が今どこにいるか見当が付いてるのかな」

「……へえ。シントさん、わからないんですね」


 するとヒナタはこちらを見て、不快感を与えるようににやりと笑う。


 確かにシントも、ヒナタが言ったことまでの予想が付いていた。だから、慌ててはいない。
 けれど、葵が今どこにいるのかはわからない。だから、何か知っていそうな彼ならどこにいるか見当が付いているのだろうと……思っただけで。


「(何この敗北感。めっちゃ腹立ったんですけど)」

「でもシントさんがそうとなると、やっぱりあいつは誰にも言うつもりはないんですね」

「……どういうこと」

「だってシントさんはあいつの執事でしょ? たとえあなたがあいつのことを異常なくらい好いていたとしても、あいつはあなたを信用している。何かあったなら話すはず」

「うん。余計なこと言わなくていいし、いちいち傷抉らないでくれる?」


 ひゅーんとHPが減って瀕死の状態になったシントを見て、ヒナタは楽しそうに笑った。


「ま、そういうことなんで。本当にそっとしておいてやった方がいいと思いますよ」

「え?」

「一番信用しているあなたにも何も言わなかった。ということは、今は本気で、一人で何かと向き合いたいと思っているんでしょう。……オレは、待ってあげることも大事だって言ってるんです」


 みんなはお互いを見合った。
 決して面白おかしく騒ぎ立てるつもりではなかった。心配だったのは本当だったからだ。

 けれどヒナタにそう言われて、自分の考えを改めようとした。