すべてはあの花のために④


「……でもさ、修行に行ってくる、つってたんだろ? てことは、あいつには帰ってくる気があるってことだよな」

「(……まあ家には連絡してるしね。それに『いい子で待ってて』って言ってたし)」

「アオイちゃんには、何か考えがあるってこと?」

「そうなんじゃないかと思っただけ。知ってるのはあいつだけだし」


 至ってまともなことを言っているので、『あれ? こいつなんか知ってんじゃね?』的な視線がチカゼに集まった。


「え。なんでオレ疑われてんの」

「ねえチカ。あんた何か隠してない?」


 ほらほら、お姉さんに言ってみなさいよと言いたげに、完全に内緒話の体勢に入るキサ。


「いや、知ってたらすぐ言ってるし。オレだって、あいつから連絡なくってちょっと寂しいって思ってるんだから、……そんなこと言うなだし」


 あれま。ツンデレ発動せずに落ち込んじゃったよ。


「悪かったわ。あんたがあっちゃんをすっごい好きだってことは伝わってきたから」と言うと、「うん……」って素直に言ってきたので、逆に大慌てなキサ。他のみんなも『葵がいない』『どこにいるかもわからない』『誰にも連絡をしていない』ということで、相当落ち込んでいるのが目に見えてわかる。


「シントさん。あいつが持っていったものってわかりますか」

「え? うん。わかるけど……」


 ヒナタに尋ねられたシントは、葵が持って行ったものを紙に書き出した。



┌                  ┐

 着替え 下着 化粧品 財布 スマホ
 ストール プリザーブドフラワー
 手帳 便せん 筆記用具 旅行の友
 時刻表 道着 漫画 音楽プレーヤー

└                  ┘



 きっと、みんな思うことは一緒でしょう。


「(漫画と音楽が好きなのね、あの子……)」

「(信人さんあっちゃんの下着まで見てるの……!?)」

「(またぷりざなんとか……)シン兄これ何?」

「旅行の友って……」

「漫画って……」

「(あーちゃん道着って……)」

「(今度漫画読みに来ちゃおっかなあ~)」


 あれ? 珍しくシンクロなし?
 こういう時に限って纏まりがない生徒会メンバーである。

 シントも「だよね~。俺もお手上げ~」と言っているけれど、ヒナタはそのまま何かを考え込んでいるようだった。