「さて。どっから話したらいいか」
「あ。そんなには話さなくて大丈夫ですよ」
「……どういうことだ」
「できれば直接聞きたいと思うので。だから、オウリくんが強くなる上で、差し支えない程度のところで話してもらってもいいですか?」
葵のにっこり笑顔に、顔が引き攣る。
「(……何だ。この、有無を言わせない感じは)」
そう思いつつ、運転しながら必死に考える。……そりゃもう考えたさ。
「お嬢ちゃんの言いたいことはわかった」
「ありゃ。わかっちゃいましたか」
「そんな際どいこと! 全部話すより難しいに決まってるじゃねえか! 何かあ? 最初っから話さなかったこと引き摺ってんのか!」
「おー流石ですね!」
しかも拍手まで送られ、ヒエンは頭を抱えた。
「……じゃあ、あいつがまだ俺の兄貴と暮らしてた時の話でもするか。どうして父親がいなくなっちまったのか。どうしてあいつが声が出なくなったのかは、あいつに聞いてくれ」
葵が頷くのを横目で確認して、ヒエンは話し始めた。
「オウの父親……俺の兄貴は、犯罪者だ」



