すべてはあの花のために④


「さて。どっから話したらいいか」

「あ。そんなには話さなくて大丈夫ですよ」

「……どういうことだ」

「できれば直接聞きたいと思うので。だから、オウリくんが強くなる上で、差し支えない程度のところで話してもらってもいいですか?」


 葵のにっこり笑顔に、顔が引き攣る。


「(……何だ。この、有無を言わせない感じは)」


 そう思いつつ、運転しながら必死に考える。……そりゃもう考えたさ。


「お嬢ちゃんの言いたいことはわかった」

「ありゃ。わかっちゃいましたか」

「そんな際どいこと! 全部話すより難しいに決まってるじゃねえか! 何かあ? 最初っから話さなかったこと引き摺ってんのか!」

「おー流石ですね!」


 しかも拍手まで送られ、ヒエンは頭を抱えた。


「……じゃあ、あいつがまだ俺の兄貴と暮らしてた時の話でもするか。どうして父親がいなくなっちまったのか。どうしてあいつが声が出なくなったのかは、あいつに聞いてくれ」


 葵が頷くのを横目で確認して、ヒエンは話し始めた。



「オウの父親……俺の兄貴は、犯罪者だ」