「昨日俺はさ、とうとう食べられると思ってたんだ。葵を」
「はああ!?」
「!?!?」
みんなが食ってかかるが、何故かシントはいきなり涙を目に溜めて。
「それなのにっ! 目が覚めたらベッドに括り付けられてんだよ! 酷いと思わない?!」
みんなは思った。葵よ、よくやったと。
「ていうのも冗談で、別に葵に手を出そうとか思ってなかったから。最初は」
「最初はっ!?」
「!?」
「もう! 話が進まない!」
流石にこの調子だと今日が終わってしまいそうだと、キサがキレた。
「信人さんいい加減にしてくれますか。みんなを煽って楽しいのはわかりますけど、あたしたちは信人さんのことなんかはっきり言ってどうでもいいんです。心配なのはあっちゃんなので。今巻たくさん出番があって調子に乗ってんじゃねえぞサブが!」
「えー。一応君もサブじゃ」
「何か言いました??」
「いいえすみません俺が悪いんです……」
「わかればいいんです」と、キサはローズヒップティーを一口。
みんなは思った。キサよ、よくやったと。
そして同時に思った。やっぱり女王様は敵にまわすまい、と。
「ぐすん」と鼻を啜った後、シントは続きを話し始めた。
「俺の記憶があるのは、昨日の18時になってないぐらいまで。起きたのは今朝の9時だった」
「シン兄どんだけ寝たんだ」
「あはは。よっぽど激しかったんでしょうねー?」
「カナ落ち着きなさい!」
怖いもの知らずのカナデがシントへ飛びかかりそうになっていたので、ツバサが必死に抑え込む。
「寝不足だったのは否めないけど、流石にここまでは寝ないよ。多分睡眠薬か何かを飲まされたんだけど、まあ覚えはないよねー」
まさかそんな事態になっているとは思わず、みんなが固まる。
「終いにはアロマの中に痺れ薬か何かを入れられて、起きたのは9時だったけどあそこから脱出できたのはその一時間後」
なんだかみんなは、シントが可哀想に思えてきた。
「連絡しようと思ったら、葵から9時にメールが入ってた。電話はしたけど繋がらなかった。GPSも検索できなかったよ」
「電話ならあたしもしましたけど……」
変な留守番サービスに少しだけキサとシントが意気投合した後。



