時刻はちょうど11時。道明寺へと到着したみんなは、息を切らせておりました。何故かというと、あれからアキラが「すぐに行く」と言って、生徒会室を猛ダッシュで出て行ったからです。みんなも葵が心配なのに変わりはなかったからです。
でも、本当に家まで猛ダッシュするとは思っていませんでした。ちなみに途中リタイアしたキサは、ツバサの背中に括り付けられていました。グレーの瞳をキラキラと輝かせながら、アキラ一人だけはなんだか楽しそうでしたが。
しばらくすると、本当に宅配の人が。
「お届け物でーす。宛名はお間違えないですかね~。それではお会計が、¥4,649になりま~す」
「(……4649?)」
段ボールの側面には【雑貨】としか書かれていなかったが。
パシリにされた挙げ句、代引きにするとか。しかも値段が物語ってるし。
「……はい、ちょうどですね~。領収出ま~す」
「ありがとーございました~」と、去って行った宅配の人を見送って、みんなだけでなくアキラにもどっと疲れがやってきた。紛うことなく、シントに振り回されてる感をひしひしと感じてしまったからだ。
一応シントに荷物を受け取ったことを伝えると、家政婦を寄越すからその人に葵の部屋まで案内してもらうようにとのこと。そういえば家の中に入るのは初めてだなと、みんなで門の外から屋敷の中を眺めていた。
しばらくすると、その案内役の家政婦が門を開けてくれた。「ご案内します」と、それだけを言った彼女の後に続き、大きな花壇のある庭を通って屋敷へ。
「急に押しかけてすみません。俺たち桜ヶ丘高校の生徒会をしています。葵さんとは友達で――」
大きな中央に佇む階段を上がりながらアキラがそこまで言いかけると、急に家政婦の様子がおかしくなる。きっとその場の全員がわかっただろう。
おどおどと落ち着きをなくした彼女は「左の突き当たりなので」と、それだけ言って逃げるように去って行ってしまった。
みんなは、家を嫌う理由がわかった。家の人にまでこんな態度を取られていては、そもそも好きにもなれない。
「突き当たりだと、言っていたな」
アキラの後ろへ、みんなが続く。
彼女らしい温かみのある扉をノックすると、中から「は~い」とシントの声が。ここが葵の部屋で間違いないようだ。
みんなと頷き合ったアキラは、ゆっくりと扉を開けた。部屋に入ると、眼鏡を掛けてパソコンに向き合っているシントの姿が。
みんなはゴクリと唾を飲む。
一体どうして呼ばれたのか。葵が何故ここの部屋にいないのか。そして……な、何故ベッドが縄だらけなのか。
聞きたいことがあり過ぎるが、シントの雰囲気がそれどころではなさそうだったので、少し様子を見ることに――。
「負けたしっ!!」
「――!?」
見ることにしたのだが、ついさっきまで真剣だったはずの顔は、今は机に伏せられていた。
どうしたのかと急いで駆け寄ると、パソコンの画面には将棋盤と【敗者】の文字が。
今までの恨み辛みがあったみんなは、堪らず――スパパパパパンッとシントの頭をスリッパで叩きました。ちなみに葵の家は外履きOK。常に常備しているのか、みんなは何食わぬ顔でスリッパを制服の内ポケットに戻していました。



