数回呼び出し音が続いてすぐ、電話口から『もしもし』と不機嫌そうな声が。
「あ、シン兄? 俺だけど」
『あ゙〜ぎ〜ッ! へるぷみ~……っ!』
「し、シン兄? 一体どうしたんだ」
『ちょ、急いで来てッ!』
「え? ど、どこに?」
『家だよ家! 道明寺に決まってるじゃん!』
もしかしたら、やっぱり葵に何かあったのかもしれないと、みんなは慌てて目配せをする。
『実は今お取り寄せしたんだけど、俺今葵の部屋から出られなくて。すぐに持って行きますーって言われたからさあ、アキが受け取って持ってきてくれないかなーって』
「は?」
突っ込みどころが満載過ぎて、一体何から突っ込んだらいいのか最早わからない。みんなも同じく「は?」と言ったまま茫然と固まっていた。
『……ちょっとアキ。なんで今違う人の声が聞こえたの』
「え? スピーカーだから」
『何してるの?!?! 俺のイメージ駄々下がりじゃんか!!』
「うん。きっと大丈夫ダヨ」
『わーお。それ大丈夫じゃないパターンの時に言うやつ』
電話の向こうで、シントは唸っていた。
「……取り敢えずシン兄、聞きたいことがあるんだけど」
『こっちはそれどころじゃないんだよ! もう今回はしょうがないけど! 俺はこれ以上傷を増やしたくないの! だから早く来て!』
みんなはどうしたものかと視線を交わす。
「……それはシン兄の解答による」
『だーかーら! 葵が大変だから来いって言ってんの!』
「よしみんな! 今すぐ行くぞ!」
葵のこととなると、とことん暴走し始める兄弟に、みんなはほとほと呆れたのだった。



