すべてはあの花のために④


 数回呼び出し音が続いてすぐ、電話口から『もしもし』と不機嫌そうな声が。


「あ、シン兄? 俺だけど」

『あ゙〜ぎ〜ッ! へるぷみ~……っ!』

「し、シン兄? 一体どうしたんだ」

『ちょ、急いで来てッ!』

「え? ど、どこに?」

『家だよ家! 道明寺に決まってるじゃん!』


 もしかしたら、やっぱり葵に何かあったのかもしれないと、みんなは慌てて目配せをする。


『実は今お取り寄せしたんだけど、俺今葵の部屋から出られなくて。すぐに持って行きますーって言われたからさあ、アキが受け取って持ってきてくれないかなーって』

「は?」


 突っ込みどころが満載過ぎて、一体何から突っ込んだらいいのか最早わからない。みんなも同じく「は?」と言ったまま茫然と固まっていた。


『……ちょっとアキ。なんで今違う人の声が聞こえたの』

「え? スピーカーだから」

『何してるの?!?! 俺のイメージ駄々下がりじゃんか!!』

「うん。きっと大丈夫ダヨ」

『わーお。それ大丈夫じゃないパターンの時に言うやつ』


 電話の向こうで、シントは唸っていた。


「……取り敢えずシン兄、聞きたいことがあるんだけど」

『こっちはそれどころじゃないんだよ! もう今回はしょうがないけど! 俺はこれ以上傷を増やしたくないの! だから早く来て!』


 みんなはどうしたものかと視線を交わす。


「……それはシン兄の解答による」

『だーかーら! 葵が大変だから来いって言ってんの!』

「よしみんな! 今すぐ行くぞ!」


 葵のこととなると、とことん暴走し始める兄弟に、みんなはほとほと呆れたのだった。