すべてはあの花のために④


┌                  ┐

       シントへ☆


 ちゃんとお仕事して
 いい子で待っているように!


 ――――――――………………
 ――――――…………



「……は? どういうこと?」


 シントは一輪挿しに目を向ける。


「……ああ、なるほどね。最初から俺をここから出すつもりはなかったってこと」


 だからあの時――『うんっ! それ、最優先だから! それが終わらないと他のことやっちゃダメー』……なんて、彼女は言ったんだ。


「いっつも仕事しろって言うくせに、最優先とか言うから何かと思えば」


 いろいろと作り方はあるが、ゆっくり時間をかけて丁寧にやった方が綺麗にはできる。染色に大体四、五日。そのあと乾かすのに二週間程見ていた方がいいだろう。

 一体何を考えているんだと思っていると、その手紙にはまだ続きが。『追伸』と書かれたそれ以降にも、シントは目を通していく。



 ――――――――………………
 ――――――…………


 追伸


 お仕事をサボるようなことがあれば
 わたしにも考えがあります


 ――――――――………………
 ――――――…………



「……は? 考えって一体……――ッ?!?!」



 ――――――――………………
 ――――――…………


 シントのメイドの写真
 ばらまいちゃうぞ~♡

 それが嫌だったらちゃんとお仕事して
 いい子で待っててね~☆


              あおい

└                  ┘




「……は、ははっ。な、何言ってるの葵。あの時俺は、お前からスマホを奪って、その上両手も縛ってたんだよ……? 一体それでどうやって写真を撮るって――」


 その時、絶妙なタイミングでシントのスマホが鳴る。確認しなくてもわかる。相手は葵だ。
 そしてそのメールには――……。



┌                  ┐

 件名
 :どうせハッタリとか思ったんでしょ


 本文
 :添付ファイル(1)


└                  ┘


 ……開けたくない。開けたら絶対後悔する。
 そう思いつつも、怖いもの見たさでシントの指は勝手に添付ファイルに伸びて――――。