「でもさ。これは何。俺聞いてないんだけど」
「ちょっ! な。なに触ってるのっ!」
急に離れたシントが、つんつんと胸の上を突いた。
「じゃあ舐める」
「ひゃ……っ?!」
問答無用で舐められたのは、赤い花だったところ。
「何これ。聞いてないけど」
「……こ、これは。その……」
「はーい。俺キレちゃった。何また勝手に印付けられてるわけ?」
「えーっと……」
無言を貫いていると、目の前からは大きなため息が落ちた。
「取り敢えず、大丈夫だったの? 前みたいに襲われた?」
「……えっと。悪い人じゃ、なかった」
「悪い人じゃないからって、こんなの勝手に付けていいわけないでしょ! 杜真くんだってそれは一緒だよ?! 何なの葵! 嫌がらなかったの?!」
「…………」
「え。マジで?」
「…………」
「どういうこと」
「……………………」
「なんで無言なんだあー!!」
「――?!」
結局のところそれ以上は何も言わなかったのだが、シントに襲われてまた一つ、葵の肩口に赤い花が咲いたのだった。



